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【MANGA都市TOKYO展を通して考えた】アフターコロナにおける美術館運営について

投稿日:2020年11月23日 更新日:

※この記事は2020年11月21日〜2021年1月17日まで大分県立美術館で開催されていたMANGA都市TOKYO展を元に考えた記事となっています。

先日楽しみにしていた企画展に行ってきました。

こちらの企画展は、もともとフランスのパリで2018年に開催されたものです。

いわゆる「クールジャパン戦略」に基づいて行われた海外向けの企画展が今年日本に巡回しにきた、というシロモノです。

巡回、といっても日本国内で展示が行われるのは東京と大分の二箇所のみ。

レアリティも相まってとてもワクワクしながら行ってきました。

【MANGA都市TOKYO】展概要

会場入ってすぐの大きなスクリーンに映し出されていたのは東京を舞台にしたアニメや映画、ゲーム作品などの映像でした。

映像左横の画面では、その作品が実際東京のどこを舞台に描かれているのかを表しています。

また、写真には写っていませんが画面前には東京の地図が置かれており、そこでも東京の都市、位置関係を把握できます。



会場内は3つのセクションに分かれていました。

セクション1では「破壊と復興の反復」。
セクション2では「東京の日常」。
セクション3では「キャラクターvs.都市」。


それぞれのセクションでは、映像作品や、漫画作品の原画、複製原画などがふんだんに展示されています。

漫画に詳しくない人でも名前を聞いたことがあるような、石ノ森章太郎さんや杉浦日向子さんの、修正跡もある生々しい原稿原画を間近で観るという、貴重な体験もできます。


会場内にはちょっとした写真撮影スポットも。

会場内に設置された実物大の電車パネルにて。2020年はコミケも中止になっちゃいましたね。


マンガはもちろん読んだことがありますし、好きですがその作品の時代背景や描かれ方などを考えてまで読んだことがなかったのでとても興味深い展示会だったと思います。

美術館にいらっしゃていたお客様も、若干お若い方が多かったように感じます。

また、友人同士と思われる方や小さなお子さんを連れたご家族連れの方も。

普段美術館をご利用されないだろうな、という風にお見受けしたのでそういった意味でも興味深く感じました。


もともと海外向けに企画されたこの展示会。

東京という都市の描かれ方、作品を通してみる東京の移り変わり、そして作品から飛び出していくキャラクターたちがどのようにして都市風景の一部となっているのかがわかりやすく展示されており面白かったです。


会期は2020年11月21日〜2021年1月17日まで。
場所は大分県立美術館1Fで行われていました。
ホームページはこちらから。
http://www.opam.jp/exhibitions/detail/622

ちょっと特殊なのがこちらの展示会、コスプレ割が効きます。

自己申告制なので、我こそは、と思われる方は勇気を持って申告しましょう。

またもちろん会場内で着替えるスペースなどはありませんので、こちらもホームページ内にあるコスプレ割についてのPDFファイルをご一読されることをおすすめします。

集客数を増やせない今できること


さて、ここからは展示会を通して考えたことを書きたいと思います。

お伺いした日は、MANGA都市TOKYO展についてのギャラリートークが聞ける日でした。

ギャラリートークの時間まで少しゆとりがあったので、館内をうろついていたところ、県立美術館のボランティア学芸員の方とお話する機会がありました。


その方によると、やはりコロナ禍における現在、美術館運営は大変だそうです。


数万人の集客数を得ていた大規模な企画展や有名作品を承知しての展示も、現在では予約制や人数制限制に切り替える他なく、集客数で稼いでいた美術館はなかなか大変とのこと。


昨年(2019年)の入場者数第一位は上野の森美術館で行われたフェルメール展でなんと68万人もの方が展示会に行かれたようです。

参照記事はこちら。https://bijutsutecho.com/magazine/insight/21112


入場料は2500円、日時指定有りでもこれだけの人が訪れたのは流石ですね。

単純計算で17億円近くの収益があったことになります。

もちろん、絵画の貸出料などで経費もかかっているでしょうが・・。

コロナ禍以前で人数制限もなかったことからこの記録が出たのだと思います。

しかし、アフターコロナの世界では単純に集客数を増やすわけにはいきません。
むしろ混雑を避け、密集を避けることが是とされる世界です。


それでも、少しでも収益を得るためにはやはり、客単価を上げることが重要になってくると思います。

美術館で客単価を上げるためには


今回の「MANGA都市TOKYO」展で気になった点を書いていきます。


まずオーディオ(音声)ガイドが無かったこと。


「MANGA都市TOKYO」展のパンフレットを見ると、明らかに見覚えのあるキャラクターのコスプレをした展示会イメージキャラクターのイラストが乗っています。


普段美術館や博物館を利用しない方たちも来て欲しいというメッセージ。


このパンフレットから展示会に来る人々は、多少なりともアニメ作品に興味や関心がある人が含まれると思います。


館内に展示されているパネルには、アニメや、映画などその作品や描かれている時代背景などの解説も乗っています。


しかし、あまり慣れていない人にとって、展示会の内容が濃ければ濃いほど、ボリュームが多ければ多いほど、後半に行くにつれ疲れてしまい、最後は雑に見てしまうパターンが多いと思います。


慣れている人は途中ソファや座席に座ってゆっくりしながら観覧しますが、パートナーがいる人や、家族連れなどはそうも行かない場合もあるでしょう。


そんな時音声コンテンツがあれば、ざっと見ただけでも展示の内容がわかりやすく、より面白く感じると思うのです。


ギャラリートーク(解説)が聞ける時間帯に行くことができれば良いですが、そうはいかない人がほとんどです。

オーディオガイドは、目でだけでなく耳から解説や作品背景などを深く知ることができます。


多くのオーディオガイドは別料金(600円〜)です。


オーディガイドは、単価を上げつつ展示の見方を教え、美術鑑賞という娯楽への敷居を低くしてくれるものです。


そして、そのガイドの音声がプロの声優さんなら、なおさらアニメやマンガが好きな方に刺さったと思います。


新型コロナウイルスの影響により、使い回せるガイド機器の貸し出しをためらわれる場面もあるかと思いますが、そんな時はお手持ちのスマートフォンにダウンロードしてもらい、これまたお手持ちのイヤホンで聞いてもらうという方法はどうでしょうか。

もちろん、違法に動画サイトなどにアップロードしない、という制約つきで。


私はオーディオガイドがあれば必ず利用してしまうタイプ。

そして作品や展示の解説が素敵なお声の声優さんだったらきっと何回か通ってしまうと思います。

そんな考えの方は私だけでは無いと思うのですがどうでしょう。


客単価を上げていくだけでなく、重要なのがリピーターの獲得です。

前期と後期に分けて展示を少し入れ替える、などは他の展覧会でもよく見る手法ですね。

今回の「MANGA都市TOKYO」展では特に入れ替え展示などの情報はないので、せめてオーディオガイドを用意して欲しかったな、というのが感想です。

パリ・東京展覧会との相違点


また、パリ・東京で開かれた展覧会との相違が大分展覧会にはあります。

初音ミクとコラボレーションしたコンビニエンスストアの様子を再現したインスタレーション(オブジェ、空間)が無かったことです。



会場の大きさの関係で、再現されなかったようですが、それなら入り口近くのミュージアムショップ空間に再現しても良かったのでは、と思います。


確かに観覧料無しで見られるエリアにはなりますが、フォトスポットにしてしまえば話題性も集客性も上がります。

ミュージアムショップがある空間には協賛であるAudi大分の赤い車がポツン、と一台置いてありました。

勿体ない空間の使い方のような気がしてなりません。


新型コロナウイルスの第3波が来るのではという(あるいはもう来ている)現状、大分ならではの展示方法がまだまだあったはず。


東京では珍しくない秋葉原の様子や乙女ロードの再現も、大分では珍しく、しかも県外への移動がはばかられる今、それだけで楽しい空間になっていたように思います。


展示会の内容がとても濃く、素晴らしいものだっただけに非常に残念です。


展示会は来年の1月まで開催しておりますが、一度見れば十分、、というかもう一度美術館に足を運ぶ理由がありません。

美術館だって儲けて欲しい


今現在ものすごい勢いで流行っているのが「鬼滅の刃」です。

新型コロナウイルスの影響で沈んでいた映画館は息を吹き返し、コンビニではコラボレーション商品が多数売り出され、関係なさそうな商品までパッケージングしただけで飛ぶように売れている。


少々眉をひそめるような感覚も否めませんが、それだけ利益を生み出すため、企業はなりふりかまっていられない、という状況なのだと思います。


対して美術館や博物館はどうでしょうか。


有名な企画展や作品展を開催するだけでなく、せっかく訪れた人をもう少し全力で楽しませに来てほしい。


そして、お金を気持ちよく使えるようなコンテンツを用意してほしい。


しかも「MANGA都市TOKYO」展は普段美術館へ行かない人でも行きたくなるような、敷居が低いテーマだっただけに勿体ないと感じました。


美術鑑賞は決して入り口の難しい、お高いものではない。


あの時会場に訪れていた方たちがどんな感想を抱いたのかが気になる今日この頃です。

関連記事:美術館・博物館のこれからについて考える

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