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美術館・博物館のこれからについて考える

投稿日:2020年11月5日 更新日:

私は、美術館や博物館に行くのが好きです。


皆さんは、美術館や博物館に足を運ばれたことはありますか?


内閣府による調査によると、一年に一回以上美術館や博物館を訪れた人の割合は42.2%で、訪れなかった人は57.5%だそうです。


また、年齢別にみると、もっとも訪れた比率の高かった世代は60代で、訪れなかった世代は70代とのことです。


この調査結果はもちろん新型コロナウイルスが流行する以前の結果です。


コロナ禍の2020年、展示自体が中止になったり、また施設が閉館になったりして、美術館を訪れた人の割合はより減ったのではないでしょうか。


経済活動や人々の移動なども徐々に緩和されてきているとはいえ、海外の絵画や、芸術家をテーマにした展覧会は現状開催しにくい状態ですし、目処も立っていないといったところだと思います。


しかし、コロナ禍を乗り切ったとしても、今後美術館や博物館は展示のあり方や、存続モデルなどを見直していかなければならない時期に入ったのだと思います。

人はどんなときに美術館を訪れるのか

先程の内閣府の調査をもう少し細かく見ていきます。


一年間にどのくらいの頻度で美術館・博物館を訪れたかの問いには、訪れた人42.2%の中で「1〜2回」が26.8%、「3〜5回」が11.5%、「6回以上」が3.9%だそうです。


一年のうちで1〜2回訪れる程度の美術館。


そしてそれでも最も多く訪れているのは60代の方たちです。


私が考えていた以上に、若年層の利用者や回数が少ないと感じました。


また、どうすれば美術館・博物館にもっと行きやすくなるかの問いに関しては、


「住んでいる地域やその近くに美術館・博物館ができる(増える)」
「入場料が安くなる」
「展覧会の開催に関する情報がわかりやすく提供される」
「全国的あるいは世界的に著名な芸術家の展覧会が開催される」


などが上げられています。


つまり美術館に訪れる人の割合を増やすためには、

✔ アクセスしやすい位置に美術館・博物館がある

✔ 面白そう、あるいは著名な作品の展覧会があるという情報を得やすい

✔ 入場料が安くなる

必要性があるということです。


しかし、本当にそれだけすれば集客力が上がるのでしょうか。


また集客力が低いということは、収益性も低いということです。


美術館や、博物館はもともと赤字経営のところが多いと聞きます。


倒産や閉館にならないのは、芸術文化は公益性をかねそなえた事業だからです。


美術館や博物館の名前には必ずと言っていいほど、県や市町村の名前が付いています。(もちろん、個人所蔵、所有の美術館もあります)


公益性や、権威性を保つために金儲けに走ってはならない、というのはもっともな考えだと思います。


多くの著名な美術品を収益の為に売買するのは美術館の役割ではなく、画商の仕事だとも思います。


収益目的ではない、でも採算度外視というわけでもないコンテンツ

それが美術館・博物館における私のイメージです。


しかし、コロナ禍で不要不急の外出を避けよう、自粛しようというムードの中で今まで通りの運営をしていれば、本当に芸術や美術が人々にとって不要不急のものになってしまいます


それでは、アフターコロナの世界を、美術館はどうすれば乗り越えていけるのか。


先日参加したイベントに、ヒントをもらいました。

大分県立美術館5周年記念イベント

このイベントは、本来2020年春頃に予定されていたものでしたが、新型コロナウイルスの影響により、2020年10月25日に開催されたものです。


内容は、大分県立芸術文化短期大学の学生さんたちによる弦楽四重奏演奏会のオープニングセレモニーから始まり、広瀬大分県知事を招いての記念式典。


県立美術館に関わりのある著名人を招いてのトークセッション。


美術館沿いの公道を歩行者天国として開放し、さまざまなワークショップや、地域の美味しいものを味わえるカドウ建築の宴へと続きました。


また、この日は有料コレクション展の一部を無料で開放。


天気が良いこともあり、たくさんの人が美術館に訪れていました。


おそらく、普段あまり美術館を利用しないであろう方たちも楽しんだこのイベント。


このイベントで行われたトークセッションが、コロナ禍における美術館のあり方について深く考える契機にもなりました。

記念トークセッション概要

「大分から世界へ 社会的役割を担う美術館を目指して」という副題がつけられている今回の記念トークセッション。


出演者は、OPAMを設計した建築家の坂茂氏、大分県出身で芥川賞作家の小野正嗣氏、OPAM特別顧問の井上洋一氏。
進行役は、NPO法人BEPPU PROJECT代表理事の山出淳也氏です。


話題はやはり、コロナ禍における美術館の役割やあり方が中心となりました。


「美術館や博物館は、子供や学生にあまり馴染みのない場所とされているが、社会見学などで触れ合う機会をもっと増やしたほうが良い」


世界的建築家の坂氏によると、「フランスでは一週間に一度は幼稚園や、学生などの社会見学が美術館で行われていたり、必ず生活の中で芸術に触れ合う機会がある」とのことです。


また、「美術館はあまり儲けようとしないが、そこもちゃんと考えないといけない。休館日には、企業が貸し切ってパーティを開いたり、結婚式場として貸し出したりして、ちゃんと継続的なしくみを作り上げている。日本もそうしなければ」とおっしゃっていたのが印象的でした。


更に、今後海外の美術館から作品を借りたりしての展示が難しくなるので、そういうときこそ、日本全国の美術館同士で連携し、協力しなければならない、とまとめていました。

美術館・博物館は消費されないコンテンツになり得るか

正直に言えば私も自分にとって興味のない展示の時は美術館を訪れません。


私にとっては丁度、映画のようなモノだと言い換えることもできます。


映画を観ること自体は好きだけれど、見たいと思える映画がなければ特に観たりしない。
(昨今の映画業界も経営難と言われていますがそれはまた別の話)


しかし、豪華な内容や、珍しい企画は(例えば海外作品の企画展示)などは、美術館や博物館そのものの規模や経済力によるところがあります。


私は大分県在住ですが、お隣の福岡県の美術館や博物館を訪れた回数の方が多いくらいです。


さまざまな魅力的な企画展も、広く集客力をあげるためには良策だと思います。


しかし、企画展などは一度訪れれば満足してしまってリピーターになることは少ないと思います。


そして、今後ますます海外作品を招致しての展覧会の企画は難しくなっていくでしょう。


大事なことは、生活圏内や行動圏内に美術館があること、そして美術館が非日常の場所ではなくなることだと考えます。


それにはやはりアクセスしやすい位置に美術館があることや、入館料自体が安く設定されていることも重要だと思います。


そして、何度も自然と利用したくなるような場所であることも大事です。


この間、面白い記事を見ました。
千葉市美術館の中に「せんべろ居酒屋」があった なぜそんな場所に?市の担当者に聞いた


美術館の地下に、居酒屋がオープンしたという記事です。


しかも、お値段が安めなので(いわゆるせんべろ)、リピーターも多そうです。


美術館×居酒屋はなかなか見ないタイプの組み合わせですが、相性はとても良さそうですね。


他にも、例えば新たにお店を出したい人向けに期限付きで場所を安く提供したり、コワ―キングスペースとして貸し出したり、もっと美術館は自由でいいと思いますが、どうでしょうか?

まとめ

収益性重視でもなく、かといって採算度外視というわけでもない。
そんなイメージが、美術館や博物館にはあります。


赤字になったからといって潰れないから適当でも許される、という気持ちで誰も運営はしてないと思います。


私は美術館や博物館で芸術に触れる時間が好きです。


自分では到底生み出せないもの、到達できないレベルに触れることが出来る空間が好きです。


アフターコロナの世界で、今、人々は娯楽に飢えています。
ということは、逆にチャンスと捉えることができます。


芸術や美術は決して敷居が高いものではない


美術館や博物館を訪れるのがついででも、有名な作品を観るのが主な目的でなくてもいいと思います。


ちょっとすき間時間があるから絵でも眺めるか、や、美味しい珈琲を飲むついでに素敵な彫刻を見たのよ、でもいいと思います。


今後、もっと美術鑑賞が多くの人にとって身近な娯楽になる時代になれば幸いです。

関連記事:【MANGA都市TOKYO展を通して考えた】アフターコロナにおける美術館運営について

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