日本人なら老若男女、皆大好き、福澤諭吉。
福澤諭吉は、幼少期の1歳から19歳までを大分県中津市で暮らしました。
彼が住んでいた屋敷は現在国の史跡として保存されています。
今回の展覧会は、その福澤諭吉の家庭観、家族観などのプライベートにせまった内容。
縁もゆかりも深い、中津市歴史博物館ならではの展覧会にお邪魔してきました。
華麗なる福澤家の人々展 概要
福澤諭吉とその妻・錦(きん)。
本展覧会では、諭吉が日々の生活の中で実際に使用していた食器や煙草盆、錦の羽織や懐紙入れなどを間近に観ることができます。
また4男五女をもうけた妻・錦との微笑ましいエピソードや、子煩悩で過保護な父親像といった、およそ一万円札の毅然とした肖像画からは別の、新しい印象を受けることができます。
展覧会の観覧料がわずか300円ということもあり、ボリュームのある内容では無いですが、それでも福澤諭吉という人物を身近に感じることのできる濃い内容となっていました。
福澤諭吉の家庭・家族観とは
上記の画像は会場に設置されている福澤諭吉の等身大パネル。
(当時日本人の平均身長が160cm以下だったことを考えれば、173cmの諭吉は非常に体格に恵まれていたことでしょう)
27歳頃、使節団で訪れたロシアで撮影されたものだそうです。
諭吉とその妻、錦。
中津の下級藩士出身の諭吉と、中津藩氏江戸定府(参勤交代が無く、江戸常駐)の武士の娘・錦との結婚は身分違いだったらしいのですが、錦の父が諭吉の才覚に惚れ込んでの縁談だったようです。
封建社会的な制度(厳しい身分制度)を嫌う諭吉と、武家の娘として厳格に育てられた錦。
堅苦しさが苦手な諭吉と、厳格な躾で育てられた錦。
時には「お出迎え(玄関先でおかえりなさいませ、旦那様・・的なヤツ)」を巡って追いかけっこをすることもあったそう。
一夫多妻や妾制度が公然の時代には非常に珍しく、諭吉は妻以外の女性には結婚前も後も一度も触れたことが無かったとのことです。
夫婦は「男が上で、女が仕えるもの」などということでは無く、お互いを支え合ういわば「親友」のようなもの、という考えで夫婦仲も睦まじく、月末には二人で並んで帳簿を管理したりと、まさにお互いを支え合うような関係だったとか。
昨今話題になっている夫婦別姓に関しても、「対等な二人が新しい家庭を築くのだから、妻と夫それぞれの姓から一文字ずつとって新しい姓を作る」ことを提案したり・・と、ぶっ飛んだアイデアを披露しています。
なにせ女性の参政権が認められたのは今から約70年前、終戦後の日本。
まして夫婦別姓に関してもようやく最近議論が活発化してきた日本。
約130年前、福澤諭吉が提唱した案が今も尚もぶっ飛んでいる、と感じてしまうのは私の感覚がアップデートできていないからかもしれません。
また4男五女と子宝に恵まれた諭吉は、子煩悩だったといいます。
子供の年齢に合わせて自ら「日々の教え」を作って子供たちに読み聞かせ、習わせたり、女に学は必要ない、とされていた時代にも娘たちに書や日本画などを師事させたそうです。
子供たちの中で一番最初に結婚した長女に関しては、両家の初顔合わせをあまりの緊張の為、病気になったと偽って2回もキャンセルしたという逸話が残っています。微笑ましいですね。
次女の結婚披露宴に関しても、若夫婦の意見を尊重するべきで、親の知り合いを呼ぶべきではないとしたり、思わず頷いてしまう考え方ばかり。
子供たちはお互いの人格を尊重させるように、「さん」付けで呼ばせたりと、現代の価値観に合わせても素敵だなぁと思わせるエピソードばかりで、感嘆してしまいました。
一周回って、更に新しい
1984年から一万円札の「顔」となった偉人、福澤諭吉。
まさに日本全国、老若男女に愛される男、福澤諭吉その人のプライベートにせまった濃厚な展覧会でした。
現代の家庭観や家族観に照らし合わせても、なんら色褪せることないその考え方は、時代を超えて一層新しく、輝かしく感じました。
2年後の2024年には約40年間務めた大役をバトンタッチする福澤諭吉。
しかし、彼の考え方や功績に関しても、まだまだ知らない魅力がたくさんあるのだと痛感しました。
ひとつ思うところがあるとすれば、中津市出身の私はどうしても地元贔屓の目線で見てしまうということです。
現代の価値観からすればアウトな、白人至上主義だったという福澤諭吉のネガティブな部分にスポットライトを当てたような展覧会も見てみたいと思うのでした。
「不滅の福澤プロジェクト 華麗なる福澤家の人々」展は現在中津市歴史博物館で3月6日(日)まで開催中です。
また歴史博物館から徒歩15分程度で行ける福澤諭吉旧居と隣接されている福澤記念館は、本展覧会の第二会場となっています。
記念館では一万円札の第一号も展示されているので、お時間にゆとりのあるかたはぜひ訪れてみてください。
開催期間 | 1月15日(土)〜3月6日(日) |
開館時間 | 9:00〜17:00(入館は16:30まで) |
観覧料 | 300円(中学生以下無料) |
休館日 | 月曜日(祝日の場合はその翌日) |
ホームページ | http://nakahaku.jp/ |
駐車場 | 有(22台) |