福岡県南部の筑後地方一帯で製造されている絣、久留米絣(くるめがすり)。
絣(かすり)とは、織物の技法の一つで、前もって染め分けた糸を経糸(たていと)、緯糸(よこいと)、またはその両方に使用して織り上げ、文様を表すものです。
久留米絣の技法は1957年に国の重要無形文化財に指定されています。
本展覧会では実際に織られた久留米絣を見ながら、久留米絣の成り立ちや歴史も知ることができます。30以上の工程を経て人の手によって作り上げられる久留米絣。その伝統に触れてみましょう。
始まりはひとりの少女の探究心
現代では国の重要無形文化財にも指定されている久留米絣。
その始まりは「井上伝(1788〜1869年)」という写真の女性だったそうです。
彼女は着古して白く染料が抜け落ちた布地を解いて研究し、柄となる部分を糸でくくって藍で染めた糸を用いてこれまでになかった意匠を凝らした織物を作り上げました。
評判を呼んだ織物は久留米藩を代表する産物となり、多くの人が技術や道具の開発に取り組みました。
明治を迎え近代産業として仕組みづくりが進み、その後昭和初期には年間生産量が200万反以上、従事者も5万人を超え、産業としてのピークを迎えます。
残念ながら戦後は洋装化により久留米絣の需要は激変。現在は少量の生産にとどまっているようです。
重要無形文化財でもある久留米絣の始まりがひとりの女性から始まっていたのは意外でした。
彼女も惜しみなく自身が編み出した技法を周囲に伝えたため、産業として勃興し、その結果伝統として現代に残っているのでしょうね。
一反織りあがるまで3ヶ月
藍色のコントラストが美しい久留米絣ですが、その工程のほとんどは人力で行われています。
柄の選定から始まり、糸染め、織り上げるまでにかかる期間は約3ヶ月。
会場では実際に久留米絣が出来上がるまでの工程を撮影した動画を見たのですが、とにかく恐ろしいほどの手作業の繰り返しでした。むしろよく3ヶ月で完成するな・・・という印象です。
ただ、技術と伝統の結晶でもある久留米絣はやはりため息がでるほど美しいです。
柄や文様も美しいので、そのまま飾っていても絵になります。
「藍と白」 -久留米絣 シンカする伝統- 文化庁重要無形文化財伝承事業 概要
「藍と白」 -久留米絣 シンカする伝統- 文化庁重要無形文化財伝承事業展は大分県立美術館にて2024年11月10日(日)まで開催中です。
展示期間は短いですが、美しい久留米絣の織物を間近に見ることができるチャンスは貴重です。お見逃し苦なく。
開催期間 | 2024年11月5日(火)〜11月10日(日) |
開館時間 | 午前10時〜18時 最終日は16時まで |
休展日 | なし |
観覧料 | 無料 |
HP | 大分県立美術館https://www.opam.jp/ |
駐車場 | 有(詳しくは大分県立美術館のホームページまで) |