月に一度、土曜日の午後、ぼくはおとうさんと会う。
すし屋のすてきな春原さん より引用
愛らしい絵柄の絵本からは想像していなかった文章。
のっけからぶっ飛ばしてくるこの「すし屋のすてきな春原さん」という絵本は、今なにかと流行りのSDGsについてわかりやすく伝えてくれる絵本です。
文中や巻末で、SDGsについて図や解説など具体的な数値についても掲載されているので、絵本といえど大人にとっても勉強になる本だと感じました。
そもそもSDGsってなんなんだ
「SDGsってなんだか急に流行りだしたけどなんだんだ・・」
「そういえば会社の食堂とか掲示板にSDGsのポスター貼ってあるな、、興味ないけど」
そういう方も多いと思います。
SDGsを一言で表すと、持続可能な開発目標のことです。
(イマココラボより参照)
私の言葉でざっくりとまとめると、「経済成長もしつつ、みんなが暮らしやすい世界を目指そうぜ!」という意味です。
ざっくりし過ぎ?あっ、石を投げないで!
最近いろんなところで目にするこのSDGsという言葉。
世界は、今後SDGsへの流れが更に加速していきます。
SDGsに取り組んでいない企業は投資対象にならない、というのが欧州でトレンドになっているからです。
日本でも、最近プラスチック資源循環促進法案という法案が閣議決定、今期国会で成立を目指した動きが活発になっています。
先立って2020年にレジ袋が有料化されましたが、販売側からするとメリットもあったようなので、この取り組みはSDGs的には成功だったといえるのではないでしょうか。
スプーン有料、コンビニ店主の本音「エコより経費削減が大きい」「レジ袋でかなり浮いた」(Yahooニュースより参照)
しかし、2015年に国連で採択されたこのSDGsという目標。
2030年までに達成しよう、という設定のようですが残念ながら全世界的にほぼ達成できていない、というのが現状の進捗状況のようです。
(SDGsに関するウィキペディアより参照)
絵本 すし屋のすてきな春原さん
少し絵本の内容に触れておこうと思います。
タイトルとイラストからお察しできるように、この絵本は女性の寿司職人さんと子どもたちの交流を描いた内容です。
『女性の寿司職人。』
この言葉に違和感を覚えた方はとってもするどい見識をお持ちの方です。
「でも逆に、『女性すし職人』って、わざわざ『女性』をつけていわれるようなことがあるだろ?女性がめずらしいから、そういわれるんじゃないかな」
すし屋のすてきな春原さん より引用
「ああ、なるほど。『男性すし職人』とはいわないもんね。女の人でもふつうにできる仕事なのに、それを強調するのはちょっと変だね」
おそらく社会人の多くが無意識にスルーしてきた内容を、改めて、そして優しく「それっておかしいんじゃない?」と問いかけてくれるこちらの絵本。
SDGsで掲げられた17の目標のうち、5番目の、ジェンダー平等を実現しよう、という趣旨にそった内容になっています。
日常生活でも「なぜ?」と問われても上手く説明できないジェンダーの問題。
「昔からそうだから」
「習慣やしきたりでそうと決まっている」
なんて言葉でごまかされがちなこの問い。
絵本のラストは、こうだ!これが解決策だ!などという押し付けがましい内容ではもちろんありません。
ただ、疑問を感じることの大切さ、考えつづけることが重要なのだと、優しく教えてくれる。
むしろ、「そういう教育をうけていない」現代の大人たちが読んだ方がいい内容だと感じました。
この絵本のココがすごい!
最初の文章から、主人公の男の子は両親が離婚した家庭の子であることが分かります。
そりゃあ3組に1組が離婚すると言われているので、そんなに驚くべき境遇ではありません。
実際社会生活を送る中で、離婚されている方は周りにたくさんいます。
それでも「子供向けの絵本」という「思い込み」を持っていた私はいい意味で衝撃を受けました。
同時に、「気合を入れて読もう」と思いました。
この絵本の中で一番お気に入りのシーンをご紹介します。
人の将来の夢にけちをつけるやつは、やばい。
すし屋のすてきな春原さん より引用
だってそれ、けっこう傷つくやつだから。
ほんとそれな!
絵本を読んで頷きが止まりませんでした。
SDGsという観点からのジェンダー問題だけでなく、人としてのモラルや良識など、守られるべき一線もきちんと描かれていることに感嘆しました。
最近の絵本って、すごい。
他にも、主人公の男の子が離れて暮らしている父親に「ちょっと大げさに喜んであげる」シーンなど、割と生々しく感じられる描写もあり、読み物としても面白いです。
教育が必要なのは大人たち
子どもたちは、純粋に、柔らかいこころで物事や周囲の大人たちの考え方を受け止めます。
「そう決まっているから」
「伝統だから」
「前例がないから」
大人たちが無知や無関心、思考停止でぶん投げた答えを、子どもたちはそのまま素直に受け止めます。
つまり、「思考を停止して周囲に意見を合わせる」のが普通の生き方になる。
そういう、「自分で考えないこと」を前提に作られたのが今までの日本の社会、日本の労働システムです。
そのシステムが上手く回らなくなってきているのはご存知の通り。
生産性や売上は下がり続け、社長や上司はいきなり経営者目線を持って考えろ、なんてことを無茶振りしてくる。
今までは指示通り、口答えせず、疑問を持つな、という方針だったのに?
SDGsや、ジェンダーに関する問題意識や物事の見方、考え方など、本当に意識改革が必要なのは大人たちの方です。
児童書、となっているこの絵本ですが、大人たちこそ読むべき本だと思います。
読んで、日常に少しでも引っかかりや違和感を覚えるべきだと思います。
特に教師たちに教育が必要だ
教師は社会に出たことがない人が教員免許を取ってそのまま退職まで勤めるから世間一般からズレた人たちが多い。
教育方法は、昭和から令和に至っても全く改善・進歩していない。
そういう意見を耳にしますが、正直私自身や周囲に子どもが居ないので実際のところは分かりません。
しかし、校則で下着の色まで指定があり、しかもそれを廊下に並ばされて(更に男性教諭に)チェックされる、というおぞましい内容の報道や、今どき手書きの提出物に親も教師も追われている、というようなことを耳にする度に確かに変わっていないんだろうな、と感じます。
私自身、高校生の頃ですが月に一度靴下の色やスカートの長さ、そして生徒手帳を携帯しているかなどのチェックを受けていました。
全校集会や、朝礼時に行われていた、「制服チェック」と呼ばれるその行事。
男子生徒、女子生徒に関わらず大体担任の先生か体育教諭(男性)が張り切っておられたのを覚えています。
今振り返って考えるとまじで無意味な時間でしたが、当時は「なんで皆守らないのかしら、ぷんぷん!」なんて考えていたのだからやはり教育というものは恐ろしいものですね。
ハンコ廃止など、一般企業でも会議資料はペーパーレス化、タブレットやIT活用がどんどん進んでいく中、手書き書類の作成に追われる学校教育の関係者の皆さま。
教育委員会や役場の皆さまは一般企業とは縁がないかもしれませんが、親御さんや子どもたちからすると相当の違和感や苦労があるかと思われます。
心中お察しします。
河野大臣がなんとかしてくれるかもしれません。
お祈り申し上げておきます。
おわりに
この「おはなしSDGs」という絵本のシリーズ。
児童書の取り扱いとなっていますが、ぜひ企業の食堂や、休憩室などに置いてみてはいかがでしょうか?
内容はわかりやすい上に、文章も優しいので短時間で読めます。
それでいて、SDGsについて学べる。
小難しい文章にまとめた解説資料を配るよりよっぽど大人たちの理解が深まると思うのですが、いかかでしょうか?
私もこのシリーズを見かけたらまた読んでみたいと思います。
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