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丸紅のクオータ制導入について考えたこと

投稿日:2021年2月15日 更新日:

先日気になるニュースが飛び込んできました。


丸紅、新卒総合職の半数女性に 「男社会」脱却へ大幅増


日本を代表する総合商社、丸紅。


昨今さかんに謳われ、推奨されている「女性活躍」というイメージからは程遠かったようです。


しかし、これは日本企業ではよくあること。
参照記事:丸紅「新卒総合職の女性5割へ」に文句タラタラの”残念な男たち”が知るべき真実


だからこそ、丸紅がクオータ制を導入したということが大きな驚きを持って、それこそニュースで取り上げられるレベルで衝撃を受けたということなのだと思います。


ちなみに、クオータ制とは政治システムにおける割当制度のこと。(ウィキペディア参照


新卒総合職の採用は政治システムではありませんが、分かりやすいのでこの記事ではクオータ制と書かせてもらいます。

なぜ今になって丸紅はクオータ制を取り入れたのか


テレビ朝日のニュースサイトによると、「大多数が男性という組織のままで、総合商社として世の中のあらゆる課題を先取りし解決するという目標を達成できるのか」という問題意識のもと「環境の変化に対応するため、より多様性が必要」と判断したため、クオータ制の導入に至ったようです。


社員のほぼ80%以上が男性というまさに「男社会」の丸紅。


環境の変化に対応するために、新たな発想で取り組んでいくためにも多様性がほしい。


「多様性が必要=新卒女性採用枠を増やす」という安直な発想がなんとも言えないところですが、それでも今のままでは時代の変化についていけない、なんとかしなくては、という危機感をようやく大企業も持ちはじめたということでしょう。
(10年〜20年ほど遅くないか?というツッコミはとりあえず置いておきます)

否定的な意見が多いコメント欄

各種報道番組で取り上げられたこのニュース。


記事が載っているサイトのコメント欄を見ると、意外と否定的な意見で溢れています。


意外と、というのは女性の方も否定的なコメントを書き込んでいたからです。
(あくまで匿名の掲示板であるため、正確に性別や年代まで特定はできません。一応「私は女性ですが〜」などの書き込みを信用するなら、という前提条件がついてしまいますが・・。)


それでも、肯定的な意見は全体の2割にも満たなかったのではないかと考えます。


コメント欄の意見を抜粋すると、
「数字合わせの採用はレベルが下がるだけ」
「男女関係なく優秀な人材を採用するべき」
「男女比率は結果論に過ぎないのだから、逆差別につながる」
といった感じになっています。


皆さんはどういった感想をお持ちになったでしょうか。


私自身は、ポジティブな感想を持ってこのニュースを受け入れたのですが、世間一般からするとそうでもなかったようです。


「性別関係なく優秀な人材を採用し、最終的にその比率が半々であればよい」


まぁ、確かに理想論ですよね。


しかし、現実はそうなってはいない。


だから、「男社会」の考えや発想を抜け出せない丸紅は環境の変化に対応できる人材が減っており、それゆえ危機感を持っている。


コメント欄が否定的な意見であふれるくらいですから、丸紅の中でもすったもんだあったのは想像に難くありません。


それでも、まずはできることから変えていこう、とクオータ制の導入につながったのだと考えます。


その姿勢は、純粋に評価に値します。


大企業であればあるほど、制度を変える、などの動きは鈍くなりがちです。

そもそも優秀な人材とは

コメント欄を見ていて思ったのですが、そもそも優秀な人ってどんな人なんでしょう。


「一を教えれば十できる人?」
「指示待ちではなく、自分からやる気をもってどんどん仕事に取り組む人?」
「接遇、応対マナーなどを完璧にこなす人?」
「営業成績、生産性が高い人?」


ひとことで定義できないはずです。


なぜなら、企業によって求められる人材は変わるし、それによって「優秀な人」という定義も変わるからです。


もしかしたら、評価を下す直属の上司によっても「優秀さ」は変わるかもしれません。



「一教えれば十できる人」は組織にとって優秀でも上司にとっては可愛げのない新人かもしれません。


「どんどん仕事に取り組む人」はアクセス権や決定権のない事象にも首を突っ込んでいくかもしれません。


「接遇マナーが完璧な人」だってときには理不尽なクレームがつくでしょう。


「営業成績や生産性が高い人」は周囲の、営業不振の人と反りが合わず結果組織の和を乱してしまうかもしれません。


そのほかいろんな定義がある「優秀な人」ですが、果たして入社前の試験や面接等だけで優秀さをはかることができるのでしょうか



エントリーシートに書いてあるのはせいぜい学歴と、資格など。


面接試験でわかるのは喋り方と雰囲気でしょうか。


面接官だってできるだけ企業にとってプラスになるような「優秀な人」を採用したい。


しかし、入社後にしかその優秀さは判断出来ないのです。



だとすれば、面接官が判断できるのは「優秀そうに見える人」

そして、「せっかく育成しても途中で退職しないように見える人」です。



丸紅の新卒採用枠が男性に偏っているのは、業務内容が過酷、ということももちろんあるでしょう。


しかし女性を多く採用した場合、出産などで育児休暇を取得した時の穴埋めをしなければならない、というリスクを避けたいという考えもあったのではないかと思います。



女性の場合、男性と違って「育児休暇を取得しない」という選択肢自体が存在しません


他にあるとすれば「退職」という選択肢のみ。


一方男性は、パートナーが妊娠、出産を迎えても「育児休暇を取得するor取得しない」と両方を選択できます。


女性を新入社員で多く採用して育成しても、どうせ4〜5年で居なくなる。


ならば育成にかけるコストをできるだけ省くためにも男性を多く採用しよう。


そのような考えをもつ企業は日本にはまだまだ多いでしょう。


そして実際そのような社会背景をもって日本企業はいままで進んできたのですから、面接官となる方の年齢、考え方からそのような採用基準が明確ではなくとも、なんとな〜くのレベルでも設けられてしまうのは当然と言えるでしょう。


だからこそ、今回のクオータ制導入は意義があると思います。


しかし、私は残念ながらクオータ制導入だけでは「多様性を獲得する」という目標は失敗に終わると考えています。

中途採用枠の割合を増やし、新卒採用枠の割合を減らすべし

私が、なぜ丸紅が「多様性を獲得する」という目標を達成できないと推測しているのか。


それは、「多様性=新卒女性」という枠組みだけしか見えてこないからです。


多様性というのは、性別だけでなく、年齢、国籍など本来ならもっといろんな意味合いをもつ言葉です。


本当に丸紅が多様性を獲得し、その多様性が発揮する可能性や思考、発想力や対応力に期待しているのなら、単に女性を増やすだけでは不十分であると考えます。


「多様性を獲得したい」のなら、もっと豊富な経験をしてきた人の採用を増やすべきです。


日本の企業、特に大企業は未だに大量の新卒を採用したがります。



しかし、新卒入社の3年後の離職率は3割。


手間暇かけて新卒を仕込んでも3年後には7割しか残りません。


7割残ればマシ?

しかし今後新卒離職率はどんどん増加していくのではないでしょうか。


終身雇用を守ってくれない。

副業解禁の流れは変わらない。



企業が求めてやまない「優秀な人」。


そういう「優秀な人」は自分に稼ぐ力があれば、わざわざ企業に雇用してもらう必要もありません。


ある程度の経験や知識を積めば、独立し、起業していくでしょう。



また出産、育児に対する体制が整っていないと感じる企業に女性も、男性ですらも長く勤めたいと思うでしょうか。


女性は育児休暇を取得できても、男性は出来ない。


制度自体はあっても取得率が低い。


そのような、出産や育児に理解度が低い企業に、女性が育児休暇を終えてまた仕事に復帰したいと思うでしょうか。


そんな時、活躍できるのは次に新卒で入社してきた社員かもしれません。

しかし、そもそも人口が減り続けている日本。


大企業が採用したい、と思う新卒自体の数はどうあっても減少しているはずです。


それなら、一定の経験や知識のある中途採用の社員だってもっと活躍できるはずです。


むしろ、「多様性の獲得」という点では、中途採用の枠を増やすことで目標を達成しやすくなるのではないでしょうか。


また、育児を経験してきた(あるいはしている)中途社員の割合が増えれば、自然と職場の雰囲気や育児に対する理解度も上昇していくと考えます。

それでもクオータ制は一定の意義がある

クオータ制の導入だけでは不十分。


新卒入社ではなく、中途採用の人員枠を増やすべき。


もし企業が今まで通りの枠組みにとらわれず、多様性を獲得し時代に対応していきたいと思っているのなら、私はそうすべきだと考えています。


しかし、クオータ制の導入は、それだけでは不十分ながらも一定の効果をもたらすと考えます。



「ジェンダーギャップ指数」という指数があります。


ジェンダーギャップ指数とは、世界経済フォーラムが毎年発表している、経済・教育・保健・政治分野の男女平等度を表す指数のこと。


日本はもちろん先進国の中ではぶっちぎりの最下位です。


しかも2020年は前年よりランクダウンという、笑えないレベルです。
参照記事はこちらから


先日東京オリンピック組織委員長の森会長が自身の失言により引責辞任しました。


日本国中の女性よりも、各国の反応の方が思ったより激しかった。


そう感じた方も多いはず。


そのくらい、私達は女性蔑視、あるいは軽視という状況に慣れてしまっているのです。



よくあること。

あの年代の男性はそういう教育を受けたのだから仕方がない。

むしろどこが問題なの?



なんて思ってらっしゃる方も、男性はもちろん、女性の中にもいらっしゃるでしょう。


日本はジェンダーギャップ指数が極端に低い国です。


20年〜30年前まではそれでも国は、企業は、家庭はうまく回っていたかもしれません。


しかし、出生率は下がり続け、経済成長率も不振、おまけに給与所得は上がらず社会負担費だけが上がり続けています。


無理矢理にでもクオータ制を導入する。


クオータ制を導入したからには、維持していくための枠組み、体制を整える必要が出てきます。


その枠組や体制こそが、働き方改革を推進していくための鍵だと思います。


丸紅だけでなく、他の大企業でもこのような体制や枠組みが整えられるようになれば、女性だけでなく、年齢や国籍にとらわれることなく結果誰にとっても働きやすい、暮らしやすい国になっていくのではないでしょうか。

まとめ

日本はとかく変化を嫌い、変化してくのが苦手な国です。


しかし、もう、そうは言ってられない状況です。


そういった意味で、丸紅ができることから少しずつ変えていこう、というメッセージを込めたクオータ制導入というニュース。


女性採用を増やす、といった数値だけにとらわれず、それを維持していくだけの枠組みや体制を整え、そしてこの取組をなんとしても成功させてほしい。


そんな思いでこの記事を書きました。


また、丸紅のあとに続く企業も現れてほしいと考えています。


少しでも働きやすい国になってほしい。


それは、もちろん男性にとってもです。


これを機にちょっとでも日本社会が良い方向へ進むことを願っています。


関連記事:【働いたら負け?】最低賃金Dランク県から見る非正規雇用の今後

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