アート 考える

【WITH HARAJUKU】バンクシー展 天才か反逆者か【感想】

投稿日:2022年1月12日 更新日:

先日上京した際、気になっていた展覧会へお邪魔してきました。



あなたはバンクシーというアーティストをご存知でしょうか?


主にイギリスで活躍しているストリート・アーティスト。


しかしその素性は隠されています。


活動する拠点はイギリスですが、例えば彼が何人(国籍)で、何歳なのかなど、個人的な情報は明らかになっていません。


分かっているのは、彼が路上や壁に作品(落書き)を発表し、その風刺や皮肉が効いた作品が高く評価されていること。


ロンドンのオークションハウス「サザビーズ」で彼の作品「風船と少女」が1億5500万円で落札直後、額縁に仕込まれたシュレッダーが作動し、ズタズタになったといういわゆる「シュレッダー事件」。


ニュース映像などでご覧になった方もいらっしゃるかもしれません。


ちなみに「シュレッダー事件」の作品は、2021年10月に再びロンドンのサザビーズでオークションにかけられ、なんと25億円の値がついたそうです。


彼は社会や世界を刺激的に表現する天才なのでしょうか?


それとも単なる社会に仇なす反逆者?


あなたはどちらだと思いますか??

バンクシーって一体なんなんだ

上記の写真はバンクシー展に配置されていたジオラマです。


バンクシー自身を模していると思われます。


彼の素性、国籍、年齢など詳しいことは謎に包まれています。


ただ公式Instagramやホームページなどは存在しています。


そこで彼自身コメントをしたり、実際彼が「作品」を描く作業風景動画なども見ることができるので、全てが謎に包まれている神秘的な存在というわけでもなさそうです。

バンクシーのInstagramはこちらから↓
https://www.instagram.com/banksy/

バンクシーのホームページはこちらから↓
http://www.banksy.co.uk/#


主な活動拠点はイギリスですが、世界中で作品を発表しています。

彼が作品のモチーフとするのは、政治、戦争、社会、資本主義などの思想、宗教、イギリス王室など多岐に渡ります。


そこから汲み取れるのは、バンクシーがとても教養と知性に溢れた人間だということ。


また彼の作品は高値で取引されるイメージですが、実際は彼のふところに入ることはあまりありません。


なぜなら彼が作品を発表するのは、路上や民家の壁。


ある時は取り壊し予定の工場の壁、ある時は寂れたバーの扉。


時にバンクシーの作品だと気が付かれずに撤去されることもあります。


そしてその作品が幸運にも消去されることがなく、売りに出される時は・・壁や扉を所有している人に富をもたらすのです。


もちろん、オークションで高値がつく度に「バンクシー」というアーティストの知名度や作品の価値が加速度的に上がっていったのはご存知の通りです。

バンクシー展概要

何かと話題のバンクシー展ですが、こちらで展示されている作品はすべて写真におさめることができます。


作品だけでなく、バンクシー自身がプロデュースした期間限定の「趣味の良い」遊園地、パレスチナの壁の前に開業した「世界一眺めの悪いホテル」などの活動の軌跡も辿ることができます。


また会場に設置されているQRコードを読み込むと、スマートフォンで作品の音声解説を聞くこともできます。


作品にはタイトルのみで解説が付いていないものも多いので、バンクシーの世界観にどっぷりと浸かりたい人は、ぜひイヤホンを持っていきましょう。

もの足りないのは描かれた場所込みのインスタレーション作品だから

バンクシー作品のイメージと言えば、皮肉というエッジの効いたアート作品。


まさにそのイメージ通りの作品をたくさん見ることができました。


特に初期の作品にステンシルを用いた作品が多いのは、その「落書き」という性質のため、警察が来る前に短時間で作品を仕上げる必要性があった為だとか。


そのような事情も知ることができ、楽しい展覧会でした。


しかし、その芸術性の高さが作品そのものにあるわけではありません。


使用している技法が彼自身の個性的なものでも、構図が新しいわけでも、画材が特殊なわけでもありません。


例えばゴッホやモネの絵画作品のように、眺めてうっとりとするような時間や体験が得られるというわけではありません。


むしろ眺めれば眺めるほど頭を悩ませてしまう。


彼の作品がアート作品として多くの人に受け入れられているのは、やはり作品の持つメッセージ性が強く、そして分かりやすいテーマのものが多いからでしょう。

こちらの作品は、ブレグジット(イギリスのEU離脱)を風刺したものです。


イギリスと欧州本土を結ぶ港町、ドーバーにある家の壁に描かれた作品だそうです。


とても分かりやすいメッセージ性。


また作品が発表された場所が、イギリスと欧州本土を結ぶドーバーなのが最高だと思います。


作品そのものだけでなく、作品が発表された場所にも意味がある。


惜しむらくは、日本に住む私はこのような展覧会で、写真で、あるいはInstagramやニュースの映像でしか彼の作品を見ることがないということです。


実際にドーバーという港町にある家の壁で見ることができたら。


また、私がEU圏に居住しているとしたら、見た時の印象や感想はもっと異なることでしょう。


彼の作品や、あるいは作品を写し取った写真や、タイトルや解説を見ても、いまいち物足りない。


それはバンクシーの作品が最も美しく、魅力的に見えるのが、実際作品が描かれた場所の前に立った時だからなのではないでしょうか。


そのことに思いが至った時、ちょっと寂しい気持ちになりました。


作品が発表された場所で、そのままの形で見ることができない。


それでは、バンクシーの作品の魅力を半減したまま見ているようなものなのかもしれません。

天才か反逆者か

バンクシーの作品に触れれば触れるほど、世界の見え方や、社会の捉え方、ひいては物事に対する考え方に変化が起こるはずです。


果たしてそれは万人にとって良いことなのか、悪いことなのか。


最後にバンクシー自身の言葉をご紹介して終わりにしようと思います。


「世界をよりよい場所にしたいと望んでいる人間ほど危険なものはない」


天才なのか、反逆者なのか。


少なくとも彼が優れた皮肉屋であることは疑いようがありません。




「バンクシー展 天才か反逆者か」は東京・原宿で2022年3月8日(火)まで開催中です。

開催場所WITH HARAJUKU
開館時間9:00〜19:00
2/24(木)は休館日
観覧料大人     1800円
大・専・高  1600円
中学生以下  1200円

平日午後5時以降、土日祝は料金がかわるようです。詳しくは下記のバンクシー展ホームページをご参照ください。
バンクシー展ホームページhttps://banksyexhibition.jp/

関連記事:何故アートは「高尚なモノ」になってしまうのか?

-アート, 考える
-,

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

私たちの体は食べた物でできているという「信仰」

私たちの体は、私たちが食べたものでできている。その考え方を疑う人はあまりいないと思います。高校を卒業し、短大に入学して初めて受けた栄養学の授業では、「人」を「良くする物」と書いて「食べ物」です。そう、 …

【大分県立美術館】養老孟司と小檜山賢二「虫展」 〜みて、かんじて、そしてかんがえよう【感想】

本記事にはセンシティブな画像(虫)が含まれています。苦手な方はご注意ください。 夏休みにぴったりな展覧会です。その名も「虫展」。解剖学者で無類の昆虫愛好家の養老孟司氏と、デジタル移送部門の研究者で蝶や …

【大分市美術館】おおいたの「推し」の建築展 磯崎新と大分のまちづくり【感想】

2022年12月28日、大分市出身で世界的建築家の磯崎新氏が逝去されました。磯崎氏はその50年以上に及ぶキャリアの中で、建築界のノーベル賞とも言われるプリツカー賞も受賞されています。大分市内には氏が設 …

何故アートは「高尚なモノ」になってしまうのか?

「美術館や博物館に足を運んでもらうためには、どうしたらいいですかね?」先日美術館を訪れた際、職員の方に求められたアンケートに答えていると、そのようなストレートな質問を受けました。また先月大分市で開催さ …

【大分市美術館】BeautY-培広庵コレクション×池永 康晟【感想】

美人画。それは、女性をモチーフに、美しい容姿、そして内面の感情の揺れさえも描き出すもの。端的に言ってしまえば美人画とは、「男の目線」で描いた「女性ってこんな感じ」「こうであったらいいな」というジャンル …

ブログ村バナー