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八百万の紙の国・ニッポン

投稿日:2021年10月18日 更新日:

デジタル庁。


2021年9月に新たに設置された何かと話題のこちらの組織。


デジタル社会の司令塔として、2026年までに官民のインフラを一気に整えることを目指しているそうです。


ちなみにデジタル庁のHPはこちらから。
https://www.digital.go.jp/
(どことなく懐かしさを感じる作りです。まだの方はぜひHPを訪問してみてください。)


さて、今後5年で頑張って日本の遅れまくっているDXを推し進めることを目指しているそうですが、果たして目標は達成できるのでしょうか。

八百万の紙々が支配する国、ニッポン

世界と比べてITやデジタルインフラの後進国と言われている日本。


残念ながら私は世界で働くという経験をしたことがありません。


しかし、最近派遣社員として県の委託事業や、データ入力の仕事などをした経験から(もちろん話せる範囲で)官民の現状をお話しようと思います。


結論からお話すると、想像以上に紙ベースの業務が多いです。


私が住んでいる大分県のITインフラが大都市よりも更に遅れているのか、全国的に紙ベースで業務を進めているのか判断はできません。


それでも、想像していた以上に「この書類(作業)要る?」という現状でした。

申請が紙ベースなら、業務も紙ベース

何を当然のことを・・とおっしゃると思います。


私が先日派遣された県の委託業務は、新型コロナウィルスに関する委託業務でした。


新型コロナウィルス感染症の影響を受けた事業主の方を対象に、県や国が行っている様々な融資、支援対策。


もちろんweb上で申請できるものもありますが、申請する側(事業主)がパソコンやネットに不慣れであることを想定したのか、それとも申請される側(県、国)に不慣れな方たちが居るためか・・どちらにせよ、紙ベースでの申請も多いです。


紙ベースでの申請とは、所定の申請用紙に、住所や事業者名を記入し、印鑑をついて提出することだと考えてください。


その申請書の、印鑑もれや事業者名が合致しているか、また住所や代表者の変更等はないか、、、。


ざっくりというと、先日そんな確認作業を行う派遣業務に就いていました。


紙ベースで上がってきた申請用紙と見比べるのは、これまた紙ベースのデータ


しかも、「ヒト」が目視と手作業で延々とその合致作業を行うのです。


最初からデータで申請されたものならば、不備を探したいのならクリック一つ、検索をかけて引っ掛けるだけ。


ものの数分で終わる作業を、「紙ベース」&「ヒト」がやるのでそれこそ何日もかかります。


おまけに「ヒト」の目視能力には限界もありますし、疲れが溜まればミスも誘因されやすいです。


そしてご承知の通り、「ヒト」には人件費がかかります。


デジタル化が急務!などと言われて久しい昨今ですが、自分自身が県の委託事業に派遣されてみて初めて知る想像以上のアナログな現状。


当然ながら、新型コロナウィルスの支援事業だけではありません。


私達が日々買い物時に受け取るレシートや、医療費を支払った際病院の窓口で受け取る領収書。


また、住民票などの公的書類。(取得申請にマイナンバーカードが使えるようになりましたが、そもそもマイナンバーカードが住民票や全ての確認書類の代わりを果たして欲しいですね)


はたまた家のポストに投函された興味のないDMなど、紙はたくさん溢れています。


そして紙ベースならば、その先にかならずたくさんのヒトの手が必要になります。


例えば生命保険会社に保険金を請求しようとして、医療費領収書のコピーを提出(また原本を「紙」にコピーしています・苦笑)すれば、保険会社側ではその提出されたデータをパソコンで入力し直す作業が発生します。


マイナンバーカード一枚で済めば良いですが、住民票などの写しがいる場面はまだまだ多いでしょう。


そして提出した先では、個人情報に当たるため厳重なセキュリティ上の管理と相当量の保存するためだけのスペースが必要になります。(5カ年保存など)


DMメール(はがき)だって、紙のカタログだって、実際に私達の手元まで誰かが配達してくれなければ意味をなしません。


右を見ても、左を見ても紙!紙!紙!!


トイレットペーパーやティッシュペーパーなど、そのまま紙として消費することを目的としているものとは違い、情報を印刷しているだけのものに振り回されているのが現在の日本です


本当に大事なのは、「情報が印刷された紙」ではなく、「情報」のハズなのに、デジタルデータは知らない間に盗まれるから紙で持っている方がセキュリティ的に安全だ、なんてことを信じている方もまだいらっしゃるでしょう。

誰一人取り残さない、人に優しいデジタル社会

初代のデジタル庁長官であった平井卓也さんは、就任した2021年9月のメッセージでこうおっしゃっていました。


誰一人取り残さない、人に優しいデジタル社会


目標設定は素晴らしいと思いますが、果たしてそんな社会が実現するのでしょうか。


「誰一人取り残さない」の「人」とはおそらく、「デジタル化って言うけど、よく分からないし、むしろ現金派。困っていることや不便さを感じたことなんて無いから興味が無い」という人を指しているのでしょう。


しかし、本来はそのような日々の生活で不便さを感じていない人のためにデジタル化が叫ばれているのではないはずです。


「今まで通りの生活で何ら不便さを感じていない人たち」に、「不便さを感じさせないようにお世話をしている人たち」のためにこそデジタル化が急がれているのです。


むしろ少し飛ばし気味のスピード感でデジタルインフラを整えて行くほうが良いと考えます。


身近なところで言えば、最近スーパーではほとんどのレジがセルフレジもしくはセミセルフレジに変わりました。


最初は四苦八苦していた人も、今では難なく使いこなせるようになっているのではないでしょうか。


その理由は、ほとんどのスーパーでは店員対応レジではなく、セミセルフレジ、またはセルフレジしか選択肢がないからです。


平たく言えば「慣れた」からです。


それでも有人対応のレジが良い、丁寧に袋詰をしてもらいたいし世間話もしたい、という人は安くて品揃えの良いスーパーではなく、個人の商店(八百屋や精肉店)や接客が丁寧な百貨店に行けば良いのです。


その方が接客対応は有償なのだという感覚を思い出せるはずです。


いずれはレジ自体がなくなるかもしれません。
スマートショッピングカート次世代モデル発表 小売企業の導入障壁を取り除く月額サブスクリプションプランを新たに導入


デジタル化に不安を覚える人はたしかにいるでしょう。


取り残されてしまうかもと危惧している人もいるでしょう。


しかし、「それしか選択肢がない」という状況では、人は意外と慣れるものです。


逆に、「今まで通りの方法も使えます」などの中途半端なやり方ではデジタル化はなかなか進みません。


現場で対応する方の業務量が増えるだけです。

優しさにあふれる国 日本

デジタルインフラを整えていくためには、少し飛ばし気味で、「それ」以外の選択肢を減らしていくことが重要であると考えます。


しかし、実際のところスーパーのレジでは今まで通り、会計まで全て有人対応のレジもあります。


また「店員を呼び出す」ボタンが設置されており、少し困ったら押せばすぐに店員の方は飛んできて対応してくださいます。


日本は優しさにあふれた国です。


必ず「今まで通りの方法しか選択できない人」を想定したシステムを組んでいます。


世界では今や珍しくなってしまったFAXは未だにどこの職場でも見かけますし、どのサービスにも必ず有人電話応対用の電話番号が掲載されています。


またその対応する業務が大量に存在していることにより、私のような派遣社員などの雇用が守られている一面もあるでしょう。


それでも、その「優しさ」は毒です。


「今まで通りの方法でも可能である」とされた時、ほとんどの人が新しく学ぶ必要があったり、機械を購入したり、慣れたりする必要性のある方法を選ぶでしょうか。


「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル社会」


7年以上前から運用が始まったマイナンバーカードの交付率はようやく65%を超えたそうです。


マイナンバーカードを作らなくても特に困らない、運転免許証や健康保険証のコピー、住民票の写しでも大丈夫、という選択肢が残っているのも一因であると思います。


もちろんマイナンバーカードを作ったとしても、カード一枚で全ての申請が可能、という状態になっていない行政側にも原因があります。


やたら申請用紙の提出や、まだまだ原本のコピーを求められるのが現状なのです。


八百万の紙々が支配し、たくさんの働く人々の優しさによってなんとか成り立っている日本。


果たしてその紙々の支配から脱却できる日はやってくるのでしょうか。


私は雇用を失うことになったとしても、今後デジタル庁が活躍し、デジタルインフラが整うことを応援しています。


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