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センチメンタル・ノスタルジック・ジャーニー

投稿日:2023年5月20日 更新日:

GW中、久しぶりにまとまった時間が取れたので、生まれ育った中津の街を思い出に浸りながら散歩してきました。


今回の記事は、そんな散策の備忘録です。


古き良き時代を感じさせるアーケード付の商店街や、真っ昼間の街の静けさ・・そんな哀愁をかき立てる旅になりました。


よろしければ少々お付き合いください。

大分県で3番目に大きな街 中津市の現状

散策の前に一応、人口データを見ておきましょう。

データはすべて大分県のホームページからお借りしたものです。


令和5年の人口動態によると、中津市の人口は大分県内で上から3番目。

面積は上から5番目で、だいたい大分市と同じ広さの部分に、大分市の1/8程度の人々が住んでいます。


なんとなくデータが頭に入ったところで、実際に駅前をうろついてみましょう。

中津市駅前 日の出町アーケード商店街

JR中津駅の眼前にある、日の出町商店街。


昭和・高度経済成長期の香りが残るアーケード付の商店街です。


訪れたのはGWの日中。
大型連休中、そして日の出町商店街はほぼ飲み屋街のため、日中から営業しているお店のほうが少ない、ということもあり人通りは閑散としていました。


人の気配が無く、雨風をしのげるアーケード街。
鳩やカラスにとっては居心地の良いスイートホームとなるようで、そこらから鳴き声や羽ばたきの音が聞こえてきました。

乱雑な印象を受ける求人募集の張り紙。

大分県の最低時給賃金は、現在854円。
この張り紙は2022年10月に改定される前に出されたのものなのかもしれません。(以前の最低時給賃金は822円でした)

中津市は福岡県との県境にあり、中津駅からは電車どころか自転車でも簡単に「越境」できてしまう距離です。

福岡県の最低時給賃金は900円。
そのため大分市内でもなかなか見かけない、時給1,000円でパートを募集しています。

当然のことながら大分市の方が人口も経済規模も大きく、いわゆる中津市よりは「都会」になるかと思いますが、よくよく考えると興味深い現象です。


ちなみに下記の画像は大分市ガレリア竹町商店街内で2023/5に撮影したモノです。

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私の生家は中津市郊外にあり、中津城近くにあった母方の祖母の家に、母に連れられて通ったことを覚えています。

中津駅まではバス、そこからは徒歩でこのアーケードの商店街を抜けて。

その時分から人々でごった返していた、という記憶は無いのですが、なんやかんやで駅を利用する人たちや、アーケードを抜けた先にもデパートがあり(現在は閉店)、子供心にも寂しさを感じることは無かった気がします。

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思い出と一緒にとぼとぼ歩いているといきなり良い雰囲気のスペースが。

「The AUTOMATIC Cake Oita」。今流行りの瓶詰めケーキの自動販売機のようです。


ケーキだけでなくコーヒーも売っているのが嬉しいですね。


昭和が残るアーケード内に令和を感じるスペースが現れており、なんとも面白い。
おしゃれだし、なんとなく清潔感もあるのでちょっとした寄り道スポットって感じでワクワクします。

店構えがおしゃれなこちらは、コワーキングスペースのようです。


お店のInstagramを見てみると、平日に稼働しているタイプのためGWは残念がら休業日でした。
2Fはシェアオフィス、1Fはカフェとして利用でき、メニューによっては学生証の提示で割引が効くよう。

私が学生の頃はこのようなお店は無かったので、ちょっと羨ましくなってしまいました。

アーケード商店街の次は、駅前にあるデパート(?)のサンリブ内をうろついてみました。

サンリブ中津駅前店

サンリブが入っている薄汚れたビルの外観と、入店して受ける印象のギャップに驚きました。


床はきれいに、フラットな物に張り替えられており、通路も広めに取られています。
商品の高さ、棚も全体的に低め。腰の曲がった高齢者や電動車いすユーザー、またはベビーカーを押している世帯にも優しい設計。

これはポジティブな変化だと思います。むしろ他のスーパーでも取り入れて欲しい位ある。

1Fにも2Fにも設けられていたのが、こちらの休憩コーナー。


テナントが撤退し、新しく入ることもなくなったのでしょう。
空きスペースの有効活用と見るか否か。

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1Fの休憩コーナーになっている部分には、昔は飲食店が入っていました。

回転寿司屋さんと、ファミレスが2店舗隣あっており、家族皆で買い出しに出かけた日曜日には回転寿司を、母に連れられて祖母の家に行ったときや用事を済ませた帰りにはファミレスでチャーハンとか食べた気がします。

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・・といっても、2店舗とも私が成人を迎える頃までには撤退しており、その場所には乾物を取り扱う店舗が入っていました。

その後も何店かテナントが入れ替わるうちに、最終的に休憩スペースへと落ち着いたのでしょう。

この日も買い物を終えたご老人たちが楽しそうにおしゃべりに興じていました。
病院の待合室感ある。

3Fには学習塾のテナントが入っており、横には広い自習スペースが設けられています。
Wi-fi、コンセントもついており、ぶっちゃけ近くの図書館より便利。


そして3Fでもうひとつ大きなスペースを占めていたのが、こちらのプレイルームです。

案内表に「子育て支援課」と書いてあることから、中津市が借りていることが分かります。

中津市のホームページによると、利用料は無料ですが、完全事前予約制、未就学児対象で親同伴必須とのこと。

あくまでも託児所ではなく、プレイルーム。

平日休日関係なく稼働しているようで、訪れた日も子どもたちの声が聞こえてきました。

ホームページに掲載されている写真によると、プレイルーム自体は広々としている様子でちょっとした遊具もあるみたい。
使い心地は良さそうですが、、使い勝手が良いかどうかまでは子育ての経験が無いため判断ができません。

散策を終えて

GWの日中、約2時間位かけて中津駅周辺をうろついて気がついたこと、それは「若者の居場所が無い」というシンプルな事実です。


よく田舎には「就職先が無い」「進学先が無い」という意見を目にします。


中津市も確かに就職先は選択肢がほぼ無い状態です。


ダイハツ、TOTOなどの大企業も郊外に工場を構えていますが、地元で募集しているのは交代勤務の工場人員です。
大企業は、基本的にスキル・キャリアアップが可能な管理職は本社採用→転勤で地方に出向というスタイルを採用しています。
地元採用の従業員は、給与はある程度アップしても当然ながらその先の将来は想定範囲外です。
他の職業といえば、飲食サービスや、小売などのスーパー、医療従事者が主で、おそらくこの中で安定しているのは医療・介護関係でしょう。


また進学先も、短大はあるものの、4年制大学はありません。

進学したい、と考えた場合は市外へ転居するしかありません。
完全通信制大学もちらほら増えて来てはいますが、その先の就職までを考えた場合、いずれは中津市から出ていくことになるでしょう。
教育レベルを高める為、大学受験ではなく高校受験の段階で「中津市を出る」という選択をする家庭も増えていると聞きます。


また本来ならば人の流れが一番集まるはずの中津駅前・周辺には学生や若者が集う場所がありません。
ほぼ飲み屋街の駅前商店街の利用者はサラリーマン世帯、駅近のデパート・サンリブの利用者のメインは高齢者世帯です。


そういえば、地元の短大に進学した私が学生の頃友人と出かけたり遊ぶ場所は特急を利用して行った小倉の街だった・・ということを思い出しました。
休日は交通費を使い、せっせと隣の県まで出かけていき、地元では無いところにお金を落としていたのです。


現在では映画館も博物館などの文化施設も中津市に存在していますが、数年前まではそれらの施設は無く「大分市まで出るか、小倉市まで出るか」といった状態でした。


しかし、アーケード街にもコワーキングスペースや、アーケードを抜けた先や中津城付近は新しく区画が整備され、おしゃれなカフェやランチスポットがここ数年で新しく開店しており、全体的にはちょっとずつ良い雰囲気になっている箇所もあります。


日本全体で見たとしても少子高齢化の波は止まるはずもなく、ますます若者世代の居場所は減っていくでしょう。

けれど、それでも若者自体がゼロになったわけではありません。

そんな田舎の街で、若い経営者が運営し、若者が集いたくなるような素敵なスポットは、まさに灯火のような存在です。

幕引きの難しさ

物事を終わらせることは、新しく始めるよりも難しい。


そのような話をよく聞きますが、中津市の状況を見ていると全くそのとおりだと感じます。


上記は中津市のホームページからお借りした画像ですが、サンリブ中津駅店内には3Fのプレイルームだけではなく、2Fにも中津市がテナントを借りていました。


中津駅から徒歩1分で行ける場所に移転してあら便利!という意見もあるかもしれませんが、傍目に見れば「とうに採算が取れなくなった商業施設に、税金を投入してなんとか持たせている」という見方もできます。


確かにサンリブ中津駅店は、景観的に中津駅に降り立った途端(それも電車の昇降口)に目に飛び込んでくる位置にあるので、もし閉店してしまえばそれだけで中津を訪れた人にマイナスの印象を与えるでしょう。


しかし、安定した収入を得られるテナント、それも市役所の窓口や業務を執り行う施設が入るということは地域の経済にとってはなんらプラスの効果を生み出しません。


地域住民はサンリブ内ではお金を落とすこともなく、そして商業施設側も営業努力によって利用客や利益を生み出すということをしなくても良くなるからです。


その原資は税金です。
(しかもサンリブは本社が福岡県にあるので、中津市民の税金を福岡県に注入しているようなものなのです)


いっそ閉店してしまった方が新しいビルやお店が開店したり、良い流れが生まれるかも・・と期待したくなりますが、中津駅前には既に営業を終了してから20年は経過しているホテルが放置されたままです。(下記はそのホテルの写真)

なぜなら建物を撤去には一番お金がかかるからです。

同じ理由で、とっくに撤去されるべき時を逃してしまったアーケード付商店街が残っています。

大分市の赤レンガ商店街のアーケードも、最近撤去されましたが、撤去費用は1500万円。一部に大分市が補助金を出しています。
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/obs/308061

また、アーケード維持・管理は商店街の組合が行っていることが多く、公的な持ち物ではありません。
そのため所有者、権利者の許可を得ないと撤去が出来ないのです。
(大分赤レンガの場合は商店街理事会が撤去を決め、アーケードに面しているビルの所有者がOKを出した、とのこと)

撤去を決めたとしても、撤去費用は本来維持・管理を行っている組合が出資すべきですが、経営努力をしなくても勝手にモノが売れた時代の商店街たちの店主たちには「無い袖は振れない」状態。

別府市のアーケードは老朽化のため組合が解体を決めたそうですが、撤去費用の援助を市に求めています。
http://54.249.105.59/Article/detail/152834


とうに転換期を迎えたはずの商店街や、駅前のビル。
将来的な予測や未来の街づくりの絵を、なんら描かずに来てしまったツケを結局税金を投入することでごまかしている。


そしてますます人が寄り付かない地域になっていく。


人が、若者が出ていくのが悪い。帰って来ないのが悪い。


実態は、田舎にはすでに若者世帯の居場所は無く、むしろ残った貴重な若者を都会へと追い出しているのが現状なのです。


しかし、若い経営者が工夫し、努力し、魅力的な運営をしているお店がちらほら出てきています。
今回の散策でそれが分かったことは僥倖でした。


次の機会があれば、再開発が進んでいる中津市城下町付近を散策してみようと考えています。

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