アート

【別府市】書肆ゲンシシャ【行ってみた】

投稿日:2023年1月29日 更新日:

センシティブな内容を含みます。閲覧にはご注意ください。


「書肆(ショシ)ゲンシシャ」。


大分県別府市にあるそのお店は、まさに「驚異の陳列室」。


人骨を使用した楽器や、人の皮を装丁に使用した本、戦時中に製造され、使用された精神抗生剤などの小瓶や性のアイテム、故人を生きているかのように見せて撮影した死後写真・・・。


店内に所狭しと並べられているのは、見る人が見れば眉をひそめるであろう、インモラルでアブノーマルな品々。

そして一般的な本屋や図書館ではなかなかお目にかかれないジャンルの、圧倒な数の蔵書。


物珍しさに惹かれて、こちらのお店を九州観光の目的地に設定する方も多いそうです。

書肆ゲンシシャへ行ってみた

大分県別府市に位置する書肆ゲンシシャさんは、別府公園(東側)から歩いてすぐのところにあります。


大きなガラス扉を開けると、店主の方が声をかけてくれるので、靴をスリッパに履き替えます。店内は土足厳禁です。


店内に入ると、キーワード(ジャンル)が並んだメニュー表を手渡されるので、関心のあるものを2つ(1つでも可)を選びましょう。
(下記の写真は公式Instagramからお借りしています)

私は「女性」と「美術」を選びました。

ジャンルを選ぶと、テーマに沿った本を店主の方が選んで持ってきてくださいます。1冊の1ページも読み終わらないうちに次々とアテンドされる本たち。

わんこそばにチャレンジしてる人って、きっとこんな気持ち。

店内に入ると分かるのですが、視界に入る部分だけでもとんでもない蔵書の量です。キーワードだけで初対面の客の好みの本を引っ掛けて持ってくる店主の技量が凄まじい。

特に中央アジア、キルギスに残る風習「誘拐結婚」について取材した写真集に見入ってしまいました。

美術品の解説もしてくれる

書肆ゲンシシャでは、本だけではなく一風変わった品々も置いてあり、店主の方が解説してくれます。


上記の写真は優生保護法下で不妊・断種手術を行う医療機関の標榜看板です。
戦後は徐々に優生思想が否定されていったとはいえ、日本で優生保護法が正式に廃止になったのは1996年。


現在もこの法案下で行われた強制不妊手術についての裁判が行われています。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230123/k10013957841000.html

一見するとなんてことのないような看板でも、ぞっとするような恐ろしい歴史を持っています。


そして、

本日のメインディッシュ(?)人体の皮を装丁に使用した「人皮装丁本(ニンピソウテイホン)」です。

これが見たくて来店したのでした。

ウィキペディアによると、画家の藤田嗣治も所持していたのだとか。

現代となっては希少価値が高く、そもそもその所在が分かっている冊数は少ないようです。


こちらの人皮装丁本は、1700年代のスペインで制作されたもので、中身は聖書だそうです。

色味から察するに白人、男女の性別はわからないがひとりの人間から作られているとのこと。

写真では見えにくいですが、毛穴まではっきりと伺い知ることができました。


DNA鑑定を行えば性別から出身地、年齢までいろんな情報が分かると思いますし気になっちゃうところですが・・まぁ、野暮な詮索です。


店内にはもちろん、こちらの人皮装丁本だけではなく他にもホルマリン漬けされたあれやこれや、避妊や性に関するアイテム、疲労がポンと取れるアレに代表されるおくすり系の小瓶などなど、書ききれない程の品物がありました。


過去に生み出され、今となっては不謹慎極まりない公序良俗に反する貴重な品々、ぜひ来店されて実際にご覧になってください。

気をつけたいポイント

店内に入れる定員は5名までとなっています。
(コロナ対策というよりは、お店の広さ的に5名が限界のようです。)

お席の予約もできないので、タイミング的には来店をお断りされることもあります。


平日に行ける人は、平日の方が来店を断られる確率が下がるでしょう。


・・と言いつつ、実は先日平日にお伺いしたところちょうど満員でお断りされてしまいました。笑。


市外、県外などの遠方より来店される際は、再訪のチャンスを増やすためにも、あらかじめ日程・時間にゆとりを持っておくことをおすすめします。

好事家たちを惹きつける部屋

湯の街・別府の一角にある書肆ゲンシシャ。


サティのジムノペディ第一番(ゆっくりと苦しみを持って)がエンドレスで流れ続ける店内では、世俗の喧騒や価値観とも切り離された時間に浸ることができます。


その場所にある本や品々は、肯定や否定などの評価を必要とせず存在し、ただ静かに誰かの手や視線に触れられるのを待っているのでしょう。


すべての人に勧められるわけではありませんが、記事を読んだ好事家の皆さん、ぜひ訪れてみてください。

利用料金1時間1,000円(紅茶またはジュース1杯付き、対応は現金のみ)
営業時間月、火、金、土、日 12:00〜17:00
定休日水、木
HPhttp://www.genshisha.jp/index.html
Twitterhttps://twitter.com/Book_Genshisha
Instagramhttps://www.instagram.com/genshisha/
駐車場有(1台)
近くに別府公園の有料駐車場(1時間無料)有り

別府公園駐車場について

書肆ゲンシシャへお車で来店する時は、別府公園東側の駐車場が便利です。(普通車と書いてありますが、軽自動車でも料金は同じです)

また入庫の際、ナンバーを画像認識されるので駐車券などは発行されません。

出庫の際に料金を支払う仕組みです。

別府公園のホームページはこちらから↓
https://www.city.beppu.oita.jp/sisetu/kouen_tyuusyajyou/03kouen_03-01beppu.html


電車の場合はJR別府駅西口を出て青山通りを西へ徒歩で7分程度です。

関連記事:美術館ってそんなにバリアフリーじゃない

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