超芸術トマソンという、芸術のジャンルをご存知でしょうか?
例えば路上にある階段。
昔は階段の先に通用口が設けられていたものの、そのドアがいつしか塞がれてしまい、今は階段だけが残されている。
ただ、昇って降りる為のものだけとなった、誰にも使われなくなったであろうその階段。
美しいままに保存されている無用の長物。
それを超芸術トマソンというそうです。
この言葉を定義したのは、美術家の故・赤瀬川原平氏。
役に立たないが保存されている。
そして無意識に生み出された物に対して、見る側が価値を見出しているという点において「芸術」との共通性があるとしています。
本展覧会は、特に路上にありふれた日常を観察し、制作活動を行っている4人の作家たちの展覧会。
日常から生み出されたはずの作品たちに、非日常の世界に連れ去られるような、不思議な酩酊感をあなたにも味わってほしいと思います。
日常から生み出された作品展
最初に出迎えてくれるのは、赤瀬川原平氏の超芸術トマソンたちです。
残念ながら、赤瀬川原平氏の作品のみ写真撮影は禁止となっています。
先述した「純粋階段」や、「風のレコード」、「雨上がりの体重計」など、、タイトルからお察しできない作品たちが展示されています。
意識しなければ目にも止まらないような、そんな不思議な超芸術トマソン。
けれど一度知ってしまったら、後戻りできなくなるような興奮に溢れています。
こちらは大分市在住のグラフィック・アーティスト、野村菜美氏の展示です。
野村菜美氏のホームページはこちらから。
https://nmrnm7.wixsite.com/naminomura
気になる風景やまちの「よごれ」を撮影し、ぼんやりとしたノイズや、ガサガサとした質感を与えられた作品たち。
一度も見たことがないはずの作品と対峙したときに、懐かしさや暖かみを感じてしまうのはよく考えれば___実はとても恐ろしい。
思い出のような画質の作品たち。
訪れた人にも、ぜひ体験したことのないはずの記憶を呼び覚ましてほしいと思います。
日常を鮮やかに表現しているのは大分県出身、在住の洋画家・安倍沙保里氏です。
安倍沙保里氏のホームページはこちらから。
https://salon.io/saoriabe
散歩しながら日常の風景を写真に撮影し、それをもとに油絵で抽象化された日常たち。
なんてことも無いような日常の風景も、氏のフィルターを通るとこのような鮮烈な印象を与えてくれるのだと気付かされます。
また大きな作品もあり、車椅子の方やお子さんの視線で見ても楽しめると思います。
近づいたり離れたり、しゃがんだり・・いろんな方法で鑑賞することをおすすめします。
最後は福岡県出身で愛知県在住の現代美術家・牛島光太郎氏による、日常からこぼれた「もの」と「ことば」によるインスタレーション作品たちです。
牛島光太郎氏のホームページはこちらから。
http://www.ushijimakoutarou.com/
路上で拾ったボタンと友人がくれたシャツ、そして刺繍で綴られた言葉。
どれも光り輝くような代物では無いはずなのに、どこか特別で、高揚感のようなものをまとっています。
このような表現方法があるのか・・と個人的に度肝を抜かれました。
また、写真でもお伝えしていますが、低い位置に置かれている作品が多く、子供さんにも見やすい展示となっています。
路上で拾った物だから、なのかは分かりませんが・・立体的に展示されたインスタレーション作品たちに彩られた空間はとても楽しげな雰囲気です。
落とし物なのか、捨てられた物なのか、忘れ去られた物なのか、、、いずれにせよ、それらから聞こえてくるストーリー・・・ご自身の声に耳を傾けてみてください。
みちの歩き方 路上の観察者たち展概要
4人の作家たちによる、路上観察に基づいた作品展「みちの歩き方 路上の観察者たち」展は現在大分市美術館で7月3日(日)まで開催中です。
作品展のホームページはこちらから。
http://www.city.oita.oita.jp/o210/bunkasports/bunka/bijutsukan/special_exhibition/mitinoarukikata.html
観覧料も600円とお手頃、中学生以下は無料なので、雨だけどどこかに出かけたい、、といった時にもおすすめです。
開催期間 | 2022年6月3日(金)〜7月3日(日) |
開館時間 | 午前10時〜午後6時(入館は午後5時30分まで) |
休館日 | 6月13日(月)、6月20日(月)、6月27日(月) |
観覧料 | 一般 600円 高大生400円 中学生以下、身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳掲示者とその介護者は無料 |