クリーンミート(培養肉)への期待と注目が高まっています。
人口爆発による食糧危機問題。
現在の畜産業に対する動物福祉問題。
その他、環境汚染や地球温暖化の面から考えても、クリーンミートの開発成功は、それらの問題を解決すると熱望されています。
肉の消費量世界一のアメリカだけでなく、オランダ、そして日本でも研究、取り組みが進んでいるようです。
クリーンミート・ビジネスには世界各国の大企業や、Google創業者サーゲイ・ブリン、マイクロソフト創業者ビル・ゲイツ、また中国の大企業が投資していることも見逃せません。
さて、あなたはこのクリーンミート、食べてみたいですか??
クリーンミートってなんなんだ
そもそもクリーンミート(培養肉)ってなんなんでしょう。
それは、動物の細胞から作る、培養肉のことです。
動物の細胞を分離して、培養器に移し、ビタミンや、糖分、タンパク質を適宜与えると細胞が成長していき、肉になるそうです。
ほんまいかな?って印象ですが、すでに2013年、オランダの大学教授、マーク・ポスト医学博士が人工培養で作り上げたハンバーグの試食会が開かれています。
先進技術を利用したそのハンバーグの値段は、なんと当時の価格で一つ33万ドル。日本円で約3500万円です。
途方も無い金額ですが、現在では研究もますます進み、クリーンミート1キロあたり65〜70ドルになっているとか。日本円で7000円〜7600円程度ですね。
あと10年〜20年もしないうちに、世界中で畜産業で生産された肉ではなく、培養液で作られた肉が普及しているかもしれません。
クリーンミートのメリット・デメリット
盛んに研究が進められているクリーンミートですが、なぜそんなにも注目が集まっているのでしょうか。
一つは、人口爆発による食糧危機が懸念されているからです。
現在地球上の人類は約76億人いると言われています。
それが2050年までに90〜100億人まで増加すると試算が出ています。
もし現在発展途上国といわれる国々が、昨今のインドや中国のように経済発展し、よりたくさんの食糧が必要とされる時が来たら。
現在の生産システムではとても追いつかず、より多くの土地、多くの水源、多くの家畜たちの飼料がいるそうです。
家畜を食べられるように育てるのは、時間も費用もかかります。
例えば牛の場合、出荷されるまで30ヶ月かかります。
しかし、クリーンミートなら先述したハンバーグ大のミンチ肉が「育つ」までわずか数ヶ月しかかからなかったそうです。
また、牛が体重を1kg増やすために必要な飼料は約10kg。
出荷時の牛の体重はおよそ700kgだそうです。
単純計算ですが、牛一頭につき7トンもの飼料が要ります。
実は人間が育てているトウモロコシや大豆は、ほとんどが人間用ではありません。
約90%が家畜飼料用として取引されています。
家畜を育てるのではなく、肉のみを培養すれば、土地も飼料も水も今までよりずっと節約できるようになります。
他にもメリットがあります。
糞尿の処理をしなくてもよいので、衛生面で非常に安全になります。
腸管内の細菌汚染も心配ありません。
なにしろ腸も胃も要らないのです。
肉の部分だけを培養させればよいのですから。
もちろん、腸や胃が欲しくなったら、その部分だけ培養させることもできます。
もう一つの理由は、やはり動物愛護、福祉の観点からです。
動物たちは人間の都合でより速く成長して、よりたくさん出荷できるように成長促進剤を打たれます。
たくさんの家畜を育てるために、そして人間の手間や費用を抑えるために狭い畜舎に放り込まれています。
犬や猫は麻酔なしで手術すれば問題になりますが、家畜は今のところ動物愛護法の対象ではありません。
クリーンミートの開発に乗り出す研究者は、そのような現在の畜産システムを変えたい、なんとかしたい・・それがきっかけになるようです。
全員ではありませんがヴィーガンの方が多い印象です。
また、アメリカでは、ヴィーガンやベジタリアンの活動が盛んです。
それでも肉の消費量が世界1位なのは、肉を食べない、という選択をする人がわずか人口の2〜5%だからです。
動物がかわいそうで食べないことにした人数が増えるのをじっと待つよりも、お肉が好きな人が満足して食べられる、殺さなくても得られる肉、の開発を研究者が希望や熱意を持って取り組んでいるのはそんな理由があるわけです。
デメリットは、当然ながら、研究・開発に多くの資金がかかること。
しかしこれは多くの投資家たちによって解決するし、現に乗り遅れるなと言わんばかりにビジネスチャンスに乗り出している起業家たちで溢れています。
成功すれば、現状の畜産業を塗り替える大きな革新と言えるでしょう。
アーリーインしておけば、莫大な利益が還元されることは間違いありません。
もう一つ予想されるデメリットは、もしクリーンミートが手に届く価格で生産できたとしても、人々がそれを口にしたくなるかどうか、です。
もどき料理じゃだめなのか
私ヴィーガン。
動物性食品は食べないようにしているの。
そんな信条を持っている人には、未だリアルの世界ではお会いしたことがないのですが、皆さんの周りにはいらっしゃいますか。
そしてそのような方たちのために生み出されたであろう「もどき肉」大豆ミート。
ヴィーガンの方たちが嬉しそうに大豆ミートでできたハンバーグや、サンドイッチを食べている場面を観るたびに皆さんも思うのではないでしょうか。
「肉、食べたくて食べたくて仕方ないんじゃん」
「動物がかわいそうとか言ったって、結局動物みたいな味じゃなきゃ満足できないんでしょ」
そんな風に嫌味を言うと怒られそうです。
実際ヴィーガンの方からしてみたら、動物を殺すこと(もしくは食べることで殺害の片棒を担ぐこと)が嫌なわけで、無殺生の、肉っぽいものを食べるのが嫌なわけではありません。
それに、畜産業による環境汚染を防ぎ、少しでも地球環境を守るために、肉食を減らそうとしている人もいます。(薬品や化粧品は動物実験によって成り立っているので、それでも矛盾は感じますが)
2〜3年前、ドラックストアの棚に並んでいる大豆ミートの豚肉を好奇心で購入して食べたときの不味さは衝撃的でした。
その時からすればまさに雲泥の差で味は進化しています。
味も、見た目もまるで肉そのものです。
より肉らしく、肉を食べた時よりも満足できるように。
そのような地点を目指して開発が進んでいるようです。
それでもやはり、近所のスーパーに大豆ミートコーナーができても、畜産肉よりわざわざそちらを購入する人は多くないと感じます。
クリーンミートが対象としたいのは、ヴィーガンではなく、そもそも自分が食べている肉や卵がどんなふうに生産されているのかほとんど関心がない人です。
端的に言えば、値段や、味などにしか興味がない人です。
ハンバーガーショップでどのバーガーを食べるのかを真剣に選んでいる、、、けれどパテにどんな牧場でどのように育った動物の肉が使われているのか、なんて気にしない人です。
いずれクリーンミートが大量生産に成功した時、そして地球や環境に優しく、低コストで生産されていると知れ渡った時、見た目も味も栄養も遜色ない場合、わざわざ割高な動物由来の肉を手に取る人は少ないと考えます。
時計の針を進めるのは誰か
生きるために食べる。
生きるために、動物や植物の命をいただく。
命をいただいたことに感謝する。
そんな考えを持つ人が、日本人には多いと思います。
しかしどうやら、ヴィーガンや、動物を愛する人々にとっては、食べるために殺すという行為は弁解のしようのない残酷なこと、という考えのようです。
でも肉が食べたくて仕方がない。
背徳感や罪悪感を抱えながらも、欲求に抗えずヴィーガンになったとしても肉食に戻る人も多いそうです。
しかし、世界を進歩させてきたのは、いつだってそのような「欲深き人」です。
より飢えなくてすむように、よりたくさん食べられるように、多くの農産物や畜産物は品種改良されてきました。
より長生きできるように、より健康でいられるように、医術や薬学は進歩していきました。
より速く移動できるように、どこまでも遠くへ行けるように、蒸気機関や車が生み出されました。
より争いに勝てるように、より強くなれるように、兵器も武器もどんどん進化しています。
動物を殺したくないけど動物の肉が食べたい。
もっと低コストで、環境に優しく、しかも倫理的な方法でできないだろうか。
そんな都合のいいおとぎ話は、もう現実に起きています。
大豆ミートの味や食感はどんどん進化しています。
代替食品だけでなく、牛乳のタンパク質構造を生み出す酵母細胞から、牛なしで牛乳を作っている会社もあります。
クリーンミートのミートボール、フォアグラはすでに開発されています。
シンガポールでは2020年、世界で初めてクリーンミート(チキン)の販売が認可されました。
日本でも、日本ハム、日清食品など大手企業やスタートアップ企業が研究・開発に乗り出しています。
全世界のスーパーで、クリーンミートが手に入るようになった時、現在畜産業に携わる人のほとんどが、新しい職業を探す必要性にかられるでしょう。
飼育される価値の無くなった家畜たちは、個体数が激減します。
動物から肉を取る、という行為は文化遺産として小規模、もしくは希少性の高い物として受け継がれていくでしょう。
進化という時計の針を進めるのは、AとBという選択肢を出された時、Cと言える人です。もしくは、AもBも、と言える人です。
さぁ人間よ、もっともっと強欲で罪深くあれ。
Aを取るか、Bを取るかで一晩悩んでAを取り、Bを悔やんで一生を過ごす。
そんな私はクリーンミートがお手頃価格になるのをのんびりと待ちたいと思います。
願わくば私が生きているうちに食べられますよう。
#PR