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なぜ貧しい人はパンがなくてもお菓子を食べてしまうのか【貧困と栄養】

投稿日:2021年5月14日 更新日:


「パンがなければお菓子を食べればいいじゃない」


むかしむかし誰かが発っしたこの言葉。


「お金持ちの人は、そうでない人がどんな暮らしを送っているのかイメージできない」というメッセージが込められています。


昔の貧困は、いわゆる飢餓状態、お腹いっぱい食べられない、たくさん食べたくても購入するお金がないことが問題でした。


しかし、現代の貧困、ことさら栄養における貧困問題は、過体重もしくは肥満状態にあるのに低栄養である、ということです。


つまり、見た目は痩せていない、むしろ少し太り気味であるのに、必要とされる栄養が足りていない状態。


もっと端的に言うと、エネルギーや糖質、脂肪は取れているのにタンパク質やビタミンなどが不足しているという状態です。


そして、それは特に所得が低い人が陥りやすい問題なのです。

なぜ貧しい人はパンがなくてもお菓子を食べてしまうのか


甘くて美味しいお菓子。

チョコレートやカップケーキ、時には菓子パンでもあるでしょう。

甘いものだけでなく、スナック菓子やジャンクフードが選ばれるときもあります。


なぜなら、それらは短時間で空腹を満たすことができ、金額も安いからです。


そして、食事という行為は基本的、生理的欲求を満たすと同時に、幸福を獲得する手段でもあるからです。


甘いものや、刺激的な味付けのスナックを食べた時に得られる幸福感は強烈な印象を与えます。

まるでこの瞬間のためだけに生きているような、仕事を頑張っているような錯覚さえ覚えます。

昔の貧しい人といえば、パン(主食)が買えるお金があっても、お菓子を買える余裕がない人のことでした。

もしくは、パンそのものを買うお金すらない人のことでした。


しかし、現代の物価基準は違います。

パン(主食)が買える金額でお菓子(スナック菓子やスイーツ)も買えてしまう。

手軽に幸福感を得ようとして、主食を我慢してワンコイン以下のスイーツに手を伸ばす人も多いと思います。


また、「ご飯かわりに菓子パンを食べる」人も多いです。


食物繊維も取れるが炊飯しなければ食べられないご飯よりも、甘さが強烈で袋を開ければすぐに食べられる菓子パンはたいへん魅力的です。


朝食は時間がないので菓子パン。

昼食も短時間で食べられる菓子パンや調理パン。

そんな生活に身に覚えのない人の方が少ないでしょう。

私も身に覚えがあります。


飲食関係の仕事をしていた時は特に早出出勤などもあったのですが、朝は火を使わずに食べられて、目を覚ますためにも甘い菓子パンをチョイスすることが多かったです。

それとインスタントのホットコーヒーを流し込んで終わり。


栄養バランスが悪いと分かっていても、ありふれた光景です。


もちろん自分の意志(好み)でバランスの悪い食事をしている人もいるでしょう。


しかし、食事に時間やお金をかけたくてもかけられない人がいるということが問題なのです。


所得が低くて勤務時間が長い傾向にある人ほど、余暇時間が減るので、自然と食事にかける時間は少なくなります。


所得が低く、勤務時間が長くなる仕事とは、いわゆる接客を伴うサービス業が多いと言われています。

またシフト制の職業では、早朝出勤や夜勤などもあり、生活習慣そのものが狂いがちになります。

株式会社ZUUホームページより引用

貧乏暇なし


一日中立ち仕事でクタクタ・・お腹が空いているけど自炊する気力なんて残ってない・・。


これだけ頑張ったんだから、夜ご飯はちょっと贅沢して豪華なお弁当を買っちゃおうかな・・。


ご褒美にケーキやお酒なんかも付けちゃったりして・・。


明らかにカロリーオーバーな上にバランスが取れていませんが、こんなささやかな幸せを味わう権利を誰が責められるでしょうか。


そもそも勤務時間が長いということは、家事や睡眠に使える時間はもっと少なくなります。


自炊で食費を抑えつつ、健康に留意するよりも半額弁当で手早くお腹を満たそうとするのは当然のことです。


年収が高くても、仕事が忙しくて時間がない!

健康に悪い食事を取って、その結果太ったり病気になるのは本人の意志が弱いからだ!


そんな意見もあるでしょう。


そしてそんな人たちは流行りのプロテインバーやスーパーフードで小腹を満たしつつ、言うでしょう。


「ジムに通うお金がなければ歩いて運動量を増やせばいいじゃない」


休みの日は寝てたいし、速く帰宅した日も寝てたいっつの。

少しでも増えた時間は趣味や家事に充てたいの。


残念ながら、所得が低くなり生活に追われていると、時間的ゆとりも、自分の健康をかえりみる精神的ゆとりも無くなってしまうのです。


さて、次は所得と食事内容の関係について、もう1段掘り下げようと思います。

所得が下がると野菜の摂取量は下がる


以下の図は、平成30年に行われた国民健康・栄養調査の結果です。

糖尿病ネットワークより引用


年収200万円未満の方の野菜摂取量は平均260.2g

一方年収600万円以上の方の野菜摂取量は平均287.6g


所得が低い人ほど、野菜の摂取量が少ないことが分かります。


実際貧乏飯、給料日前などのキーワードで検索すると、出てくるのは丼ものやパスタなどの一皿で完成する糖質系メインのメニューが多いです。


手っ取り早く、お腹を満たすことができる上に単価も安く抑えることができるレシピ。


そもそも所得が少ない人は、食費を節約することで少ない所得から貯金を増やそうとします


そのような方が、スーパーで野菜や果物を購入するという選択肢を持つことはますます少なくなるでしょう。


どうしたってご飯、パンや麺類を一番に購入し、次は肉類(それも安い鶏肉や豚肉)、余ったお金でお楽しみのお酒やスナック菓子を選ぶのではないでしょうか。

バナナ95円(4本)より、プリン200円(1個)を選ばされている私たち


コンビニは美味しそうな新作スイーツを毎週のように発売します。


見た目も良し、インスタ映えも良し、味も良し、しかもケーキ屋さんや専門店で購入するより安い。


プチプライスのスイーツを週末(あるいは仕事終わり)のご褒美にしている方は多いのではないでしょうか。


食物を摂取するということは、栄養を摂取する、空腹を満たすと同時に幸福になるという手軽な手段でもあります。


甘くて美味しくて見た目もキレイなスイーツがワンコイン以下で手に入る。


健康面や栄養のことを考えれば、スイーツを200円で購入するよりも、200円分の果物を購入した方が身体に良いことは分かっています。


しかし、我々はそれでもわずか数分で食べ終わってしまうスイーツを選ぶでしょう。


だって生クリーム美味しいんだもん。


所得に余裕があれば、朝食用のバナナをカゴに入れ、おやつ用にプリンを入れることもできます。


しかしどちらかしか選べない時、甘くてビタミンも豊富で食べごたえのある果物を選べる人は少ないのではないでしょうか。


また企業も、売上を増やすため、手にとってくれるような映える商品や、リピーターになってくれるような美味しい商品をどんどん生み出します。


スーパーでも魅力的なスイーツコーナーを素通りして果物コーナーに時間をかける人は少ないでしょう。

身体に良いからではなく、美味しいから食べる


身体のために、健康のために、我慢して薬だと思って食べなさい。


野菜を食べる時、子供の頃そんなことを親から言われた思い出があります。


幸い私は嫌いな食べ物がひとつしかない(パクチー)という有り難い育ち方をしたため、日々の食事はバランス良く食べることを心がけて、実践しています。


じゃあ野菜が嫌いな人はどうしたらいいの?

そもそも購入するゆとりがない人は?


それには、野菜の美味しさを知ってもらうことが重要であると考えています。


旬を迎えた野菜、とれたての野菜は、それだけで甘く、風味も強く、とても美味しいです。


私はスイーツやスナック菓子、菓子パンやお酒をすべて我慢して野菜や果物を食べろ、と言いたいのではありません。


ただ、野菜も果物もとても美味しい。


健康に良いから食べる、ではなく私にとって野菜や果物はスイーツや菓子パン同様美味しいものであると感じているから食べているのです。


もちろん、美味しい野菜や果物の選び方にはコツがあります。


今流行りの野菜宅配サービスを利用すれば、確実に美味しい野菜が届きますが、旬の野菜を選ぶように心がければスーパーでも十分に美味しい野菜が手に入ります。


調理にかける時間がない時もあると思います。

仕事でへとへとになり、体力的に厳しい場合もあるでしょう。


そんな場合でも絶対に自炊すべきとは言いません。


私も半額のお弁当やお惣菜は好きです。

特に揚げ物は片付けが面倒なのでもっぱらテイクアウトに頼ります。


でも、休みの日やゆとりのある日は、少しだけでもキッチンに立つ習慣をつけるようにする。


凝ったものでなくても良い、少ない材料でできるレシピもあります。

どうしても料理が苦痛、という人以外は料理を楽しむという時間を持つことをおすすめします。


一番お伝えしたいことは、美味しい野菜や果物を味わったり、ゆっくりと料理を楽しむ時間がないほど追われている生活は、いずれ精神的にも肉体的にも破綻するのではないかということです。


追われている原因が仕事なら、働き方を見直すなどをして健康に良い生活を送ってほしいと思います。


なぜなら、過体重や低栄養状態により引き起こされた病気(糖尿病、肥満など)で苦しんでしまうのもアナタです。


そしてアナタが苦しんでいる時に助けてくれるのは、雇用主ではないのです。

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