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【大分県立美術館】デミタスカップの愉しみ【感想】

投稿日:2023年4月2日 更新日:

エレガンスな皆さん、ごきげんよう。


コーヒーは一日の始まりに欠かせないという方も、カフェインは受け付けないという方も楽しめる展覧会「デミタスカップの愉しみ」展に行ってきました。


趣向や技工を凝らしたカップの展示数は約380点。


あなただけのお気に入りを勝手に見つけるも良し、中世貴族の生活を想像して浪漫に浸るのも粋。


ひとつひとつのカップから歴史的な背景、各国の外交関係、文化や流行まで見えてくるのもポイントです。

デミタスカップってなんなんだ

(本展覧会はすべて写真撮影OK、動画撮影はNGとのことです)

デミタスカップの語源はフランス語。


デミ=demi(半分)、カップ=tasse(カップ)で、組み合わさった言葉です。
通常のコーヒーカップの容量は約120mlですが、デミタスカップは約半分の60ml〜80ml。


コーヒーは、正式なコース料理の後に頂くものなので、サイズ的にもちょうど良いのだとか。


デミタスカップ自体の起源は諸説あってよく分かっていないそうですが、18世紀(1700年代)のフランスではすでに嗜まれていたという記述が見つかっているそうです。


私が普段コーヒーをしばいているマグカップとは似ても似つかないような可愛らしいサイズ・・。


また、展示されているデミタスカップはすべて村上和美さんという方の個人蔵です。(村上コレクション)
村上さんのInstagramではデミタスカップの美しい写真をたくさん観ることができます。
https://www.instagram.com/kzmicm/

トレビアンな世界へようこそ

作品展は大きく2部構成になっており、1部はシノワズリ(中国様式)、ジャポニズム(日本様式)、そして東洋の刺激を受けて発展したアール・ヌーヴォー、アール・デコ様式のカップが並んでいます。


2部は、とりわけデザイン・技工に凝ったものや、大半が陶磁器であるデミタスカップには珍しいガラス製のものなど、一風変わったカップが並んでいます。


ほんの一部ですが、雰囲気をお伝えします。

カップ&ソーサーという文化は欧州で独自に発展したものです。

ソーサーにも美しい絵が描かれています。カップの腹(?)にも。
この角度以外受け付けないぞ、という強い構図。

こちらはフランス製のもの。

取手が白鳥になっています。(取手が付いているのも欧州独自の文化だそうです。そういえば日本や中国は湯呑を使いますものね)


取手が付いていても、繊細過ぎてむしろリヴァイ兵長飲みをしてしまいそうです・・。

超絶技巧過ぎてもはや何が起こっているのか分からないレベル。ホントに透けてる?という位影がくっきりと浮かんでいます。すごい。


ちなみに当時植民地から大量に継続して金銀を手に入れることが出来た欧州では、細工や加工の技術が大いに発展したのだとか。闇深。

こちらはドイツ製。

もうなんか色んな意味で飲みにくいやろ・・口の端からダバァってなりそうやし、なんか取手の人と目と目が合う瞬間訪れるやろ。気まずい雰囲気になるやろ。

会場内に展示されている作品は約380点と、豊富なのできっとあなただけのお気に入りが見つかるはずです。

実際にカップでコーヒーを飲んでいる場面やストーリーを描いてみるとより愉しさが深まると思います。

芸術や技術の発展の裏にあるもの

華やかな図案や、手の混んだ技工が施されたデミタスカップ。


その芸術性の高さから、現代でも人気があり、美術品として収集されている方は各地にいらっしゃるそうです。


デミタスカップは言わずもがなですが、時計でも、本でも、あるいはドレスでも、始まりは一部の特権階級だけが持つことのできるモノです。


そして時とともに技術が発展し、量産できるようになり、徐々に大衆にも手が届くような値段になっていく。


しかし、その芸術性やある意味無駄とも思える技工性が極限まで高められるのは、そのモノが特権階級だけの特別なアイテムである期間なのかもしれません。


権力者同士の財力や意地の張り合い、各国同士の技術力や開発力の競い合いを経てやがてバランスを取るように。


現代でも新たなデミタスカップは生み出されていますが、芸術性というよりは、利便性や美味しいコーヒーが飲めることに価値が置かれています。

どちらが良い、とか悪いとかいう話でもないのです。
現代ほど、手軽に安価なコーヒーが、コンビニでも買える時代はないでしょう。


けれど、最もコーヒー文化がきらびやかに花開いた時代。
カフェ文化を通して、交流を楽しんでいた時代。


デミタスカップの美しさに目を奪われてしまうのは、現代人が味わうことのない時代の空気をまとっているからかもしれません。

展覧会特別メニュー

館内2Fにあるカフェ・シャリテでは、デミタスカップの愉しみ展コラボメニューを展開中です。

パフェの構成はコーヒーゼリー、バニラアイス、クッキーというシンプルなものですが、コーヒーゼリーの味も良く、アイスも濃厚で美味しかったです。

セットのコーヒー(ホット)は、さすがにデミタスカップというわけではありませんでしたが、ちょっと可愛いカップ&ソーサーで提供されるので、展覧会の雰囲気そのままにティータイムをたしなむことができます。


シャリテではもちろんランチや他のデザートもいただけるので、ぜひお立ち寄りください。
カフェ・シャリテのメニューはこちらから↓
https://www.opam.jp/topics/detail/263

関連イベント

展覧会を記念して、イベントが開催されます。
各イベントの申込みはOPAMのHP、申込みフォームから行うことができます。
https://www.opam.jp/topics/detail/789

講演会「魅惑のデミタス・カップ-その歴史と謎」(終了)

講師:岡部昌幸(展覧会監修者、帝京大学教授、群馬県立近代美術館特別館長)
日時:2023年4月1日(土)13:30〜15:00
場所:2階 研修室  定員:60名(要事前申込)

特別イベント「デミタスカップ”収集”の愉しみ」

講師:村上和美(所蔵者)
日時:2023年5月7日(日)13:30〜15:00
場所:2階 研修室  定員:30名(要事前申込)

ギャラリー・トーク

日時:2023年4月15日(土)、29日(土・祝)、5月6日(土)、27日(土)
   各日14:00〜15:00
案内:担当学芸員
場所:3階 展示室B
申込:不要(要展覧会観覧券) 

注意点

ご覧のように、会場は展示作品の間が広めに取られており、車椅子の方でも移動がしやすいと思います。

ただ、上から覗き込むような形の展示は、立ち上がった状態でないと見えない位置に設定されており、他にも鑑賞しにくい位置にある作品も2割程度あると感じました。


作品解説も真正面ではなく、上から観る位置にあります。


と、いうか解説自体が非常に字が小さいのでアラフォーにもきつかったです。(解説より作品を目立たせるためかもしれません)


以上参考になれば幸いです。

デミタスカップの愉しみ展 概要

「デミタスカップの愉しみ」展は大分県立美術館で5月28日(日)まで開催中です。

ミュージアムショップにはミニチュアサイズのデミタスカップや、実用的な方のデミタスカップも販売しているので、そちらもぜひチェックされてみてください。

開催期間2023年4月1日(土)〜5月28日(日)
開館時間午前10時〜19時
金・土曜日は20時まで
(入館は閉館の30分前まで)
休展日なし
観覧料一般 900円
高大生700円
中学生以下・障害者手帳掲示者とその介護者(1名)は無料
HP大分県立美術館https://www.opam.jp/
展覧会https://www.opam.jp/exhibitions/detail/910
Instagramhttps://www.instagram.com/opamjp/
駐車場有(詳しくは大分県立美術館のホームページまで)

関連記事:何故アートは「高尚なモノ」になってしまうのか?

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