プラスワンプロジェクト。
2020年春、新型コロナウイルスの影響・拡大により、全国の学校で休校措置がとられました。
その結果、学校給食で消費されるはずだった大量の牛乳が行き場を失うことに。
農林水産省は酪農家を支えるため、各家庭での牛乳やヨーグルトを普段より1本多く消費することを推進する「プラスワンプロジェクト」を2020年4月21日より開始しました。
「プラスワンプロジェクト」の結果、家庭での消費が約2割増加。
また大手コーヒーチェーン店や、コンビニ各社などでも牛乳を使用した飲料は割安になるなどのサービスを行い、生乳廃棄、乳牛を減らすなどの対応をすること無く、生乳生産のピークを乗り切ることができたそうです。
その後は、セカンドシーズンと題し、在庫が過剰となっている脱脂粉乳を使っている乳製品を中心に、アイスクリームは1日1個、ヨーグルトやチーズは普段より1個多く消費することを推進しています。
しかし牛乳の消費量は、新型コロナウイルス流行前より年々減少していました。
「ミルク世紀」は、そんな消費量減少に危機感を覚えた、MILK JAPANという酪農指導団体「中央酪農会議」が中心となって出版した本です。
出版された年は2011年。
すでに10年以上前から、牛乳の消費量は減少しているのです。
年々消費量が減少しているところに、今回のコロナショックの発生。
酪農を生業にされている方の心痛は、想像に絶するものがあります。
そもそも何故学校給食では牛乳が出るのか
「学校給食で美味しくない脱脂粉乳を飲ませられたから、牛乳が嫌いなのよ」
子供の頃、母が牛乳に対してよく愚痴をこぼしていたのを覚えています。
幸い私の時代では脱脂粉乳ではなく、美味しいパック牛乳が提供されていました。
そもそも、何故学校給食では牛乳が飲料として選択されているのでしょうか。
ひとことで言えば、栄養価が高いからです。
第二次大戦後、栄養価に注目した政府の国家プロジェクトとして、酪農が全国で推し進められていきます。
その結果、供給も安定し、価格も安定します。
安定した価格で、栄養価が高い。
現代に至るまで学校給食で牛乳が採用されつづけているのは、それが理由のようです。
「選ばれなくなった」牛乳
母が愚痴をこぼしながらも、家の冷蔵庫を開けると牛乳がいつも入っていました。
学校から帰ってきて、牛乳をコップに注ぐ。牛乳を飲みながら、ゲームをしたりおやつを食べたりする。
そんな日常がありました。
しかし、現代家庭で消費する飲料は様々な選択肢があります。
緑茶に紅茶、コーヒー。
炭酸飲料もあれば豆乳だってあります。
しかもそれらが低価格で、コップに注がずに飲める手軽なペットボトル飲料という形で売られている。
気分や、食べるものにあわせて飲み物を変えるのは当たり前の時代です。
我が家の冷蔵庫にだって、常に牛乳は入っていません。
シチューを作るときや、飲みたい気分になったときだけしか購入しません。
牛乳消費量が減少した理由は、牛乳以外の飲料の選択肢が増えたからです。
昔は安定して安価で得られる栄養価の高い食物の選択肢も少なかったです。
そのため牛乳は「体を大きくするために、多少無理をしても飲むべきもの」という価値観でしたが、今もその価値観のままの人は少ないでしょう。
牛乳を飲むとゴロゴロする、下痢をしてしまう、という乳糖不耐という症状があるという認知が広まったのもあります。
では再び選んでもらえるようにするにはどうしたらよいのでしょう。
そのきっかけを少しでも増やすために、牛乳の魅力に気がついてもらうために生み出されたのがこの本です。
ミルク世紀のココが好き
(上記の画像はミルクジャパン公式サイトよりお借りしています)
牛乳の魅力を一番丁寧に、わかりやすく解説した本。
本書を一言で表すとしたら、こうなると思います。
その内容は、哺乳類の解説にはじまり、牛乳に関する基礎知識、はたまた牛乳を使ったレシピから、牛乳消費量減少についてのコラムまで、多岐に渡ります。
文字にすると難しい印象を受けますが、可愛らしいイラストがふんだんに使われていてとても読みやすいです。
牛乳を美味しく飲むためのレシピや、逆に美味しくなさそうなレシピまで載っているので、読み終えた時はちょっと牛乳が飲みたくなってくる不思議な読後感です。
それでも牛乳消費量は向上しないだろう
ミルク世紀を読めば、牛乳を飲む習慣がない人も、きっとちょっとだけ牛乳のことが気になってくるはず。
しかし牛乳消費量減少問題については、例えば今回のプラスワンプロジェクトのように酪農家の方を応援するために牛乳を飲もう!とかで解決するような単純な問題ではありません。
一昔前にはテレビコマーシャルで「牛乳に相談だ!」などのキャッチフレーズが流行ったことがありました。
それでも、牛乳という飲料の周知やイメージアップにつながっても、消費量増加には結びつかなかったのが現実です。
おそらく、MILK JAPANの期待とは違い、牛乳の消費量が増加することは、残念ながらのぞみが薄いでしょう。
ですが、消費につながるきっかけ、興味の入り口は、目でも耳でも舌でもいいはず。
牛乳消費量が減少とか、こまけぇこたぁいいんだよ!
栄養たっぷりで値段も安定している牛乳。
たまには牛乳、飲んでみませんか?
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